映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アルピニスト」感想

f:id:StarSpangledMan:20220725002546j:image

アルピニスト、観た。命綱なしのクライミングに挑む若き天才、マーク・アンドレルクレールの挑戦を追う。アレックス・オドルノの「フリーソロ」に比べると映像的な見応えは少ないが、密着を拒む孤高の天才の生き様、そしてそんな彼との距離感が興味深いドキュメンタリーになっている。面白かった。

「ビリーバーズ」感想

f:id:StarSpangledMan:20220725002358j:image

ビリーバーズ、観た。無人島で修行を積む三人のカルト信者が、徐々にその欲望を曝け出していく…。面白かったけど突き抜けるものがなく刺さらなかった。もっと嫌悪感煽られると思ったんだけどね。真夏の炎天下、捉えどころのない浮遊感は悪くなかったが。スイッチ入った後の副議長が超絶官能的でした。

宇野祥平の情けないオーラとその裏に潜むトゲトゲした狂気のバランスが、この映画の土台になっている。ほかの役者では成り立たなかっただろう。おでこに血管浮き出し、文字通り口角泡を飛ばしてわけわからん理屈を並べ立てる様は恐怖。話通じそうで通じない感じ。

そして、北村優衣ですね。エロかった。スイッチが入った後のオペレーター(磯村勇斗)に向ける目線、仕草、息づかい。議長のときのそれとは全く違う。場面ごとに異なる表情を見せ、これから色んな作品で活躍できるだろうと思った。あと、声がいいですね。湿度のある声というか。エロかった。

しかし、カルト宗教をテーマにしながら、どうにも観ているこちら側に侵食してくる感覚がない。スクリーンの向こう側で変なことやってる人たちを観察する、というだけ。それで楽しみ方としては正解なのかもしれないが。自分の身に危険を感じることはなかった。むしろもっとシュールに振り切れば…。

「希望と絶望 その涙を誰も知らない」感想

f:id:StarSpangledMan:20220725002124j:image

希望と絶望 その涙を誰も知らない、観た。コロナ禍に翻弄された日向坂46の二年間に迫る。まさしく自分がハマった時期から現在までの期間、その裏側とメンバーたちのプロ意識を知られたのは良かった。この頑張りに自分は支えられたんだなあ。しかし、一方でドキュメンタリー映画としては歯応えなし。

もともとはひなくり2019のサプライズ発表から東京ドーム公演までの一年間を追うドキュメンタリーにする予定だったが、コロナ禍により、大きく方向転換を迫られたとのこと。でも、グループの軌跡を追うのであれば、正直この映画の二年という期間でも短かったのではないかと思う。

大きな柱となるネタがないので裏側を見せるしかない、という風に見えてしまう。キャプテンのコメントから察するに、(当たり前かもしれないが)多くのメンバーはプロとして頑張っている姿を見せたいのであって、その裏側や苦労はエンタメとして見せたくないし、好きに消費もされたくないのだろう。

「三年目のデビュー」と比べると、裏方の大人の顔が見える映画だ。メンバーの相次ぐ戦線離脱や、過密スケジュールによる摩耗は、明らかに大人たちのせいだと言いたげな。説教してる「偉いおじさん」の絵面は、そういう切り取り方だよな。そして、複数のメンバーを中心にストーリーを組み立てる。

言ってしまえば、キャプテンと渡邉美穂、それから過渡期のセンターとしての加藤史帆。特にキャプテンと美穂がいかにグループを支えてきたか。どんなに辛くても人前では笑顔でなければならないアイドルの仕事は過酷だ。この映画で感動したのは、そんな彼女たちのプロ意識ですね。

「幻の蛍」感想

f:id:StarSpangledMan:20220725002015j:image

幻の蛍、観た。両親の離婚により離れ離れにくらす姉妹が、ホタルを探しに行くひと夏の物語。大きな起伏はないが、たしかに、ゆっくりと変化していく。内向的な姉と、愛嬌ふりまく妹の距離感が面白い。こういう女の子もクラスに居たな、なんて思いながら。夢とか恋とか描かない青春映画も良いものだ。

フジテレビのヤングシナリオ大賞佳作をもとに、富山在住の新人監督が、オール富山でロケで撮影した作品。主演の野岸紅ノ葉は当然、富山でオーディションした新人女優。どこまで計算して組み立てたのかは未知数だが、たしかに、「いま・ここ」でしか出せないオーラを纏っている。

ご飯を食べる場面がいい。リアルな手触り。戯画化された「思春期の中学生」でもなく、かと言って、捉えどころのない場面でもない。きちんと、かなたの日常、かなただけの日常になっている。話は逸れるが、かなたが二日酔いの母に水を渡す場面のショット(菊池亜希子の手だけ見える)がお気に入り。

「ソー:ラブ&サンダー」感想

f:id:StarSpangledMan:20220724184949j:image

ソー:ラブ&サンダー、観た。ワイティティ節炸裂。楽しい。しかし、焦点がぼやけていて「もっと面白くなったのに〜」と思ってしまった。傲慢な神々は、富を独り占めする超富裕層のメタファーだ。C・ベール演じるゴッドブッチャーのヴィランとしての強度がこの映画にかろうじて一本の芯を通している。

神の座を降りたソーの成長は、エンドゲームの時点である程度済んでいる。「自分探し」は終わったのだ。最後の清算がジェーンだった。しかし、ジェーンはひさびさに登場したわりに描写が弱い。なぜ彼女はムジョルニアに選ばれたのか?もう少し深掘り、この映画の縦の軸にしてほしかったかも。

アクションは楽しい。冒頭のガーディアンズ・オブ・ギャラクシーとの共闘。ぎりぎりマンガっぽさが勝る動き。「マイティ・ソー」一作目からだいぶ遠いところまで来たな。いちばん面白かったのは中盤。チャキチャキした動きとパワフルな打撃の迫力は、ザック・スナイダー作品を思い出す。300みたいな。

ラッセル・クロウが良かった。あのブヨっとした体の太々しさ。出番は少なかったが存在感がある。あとテッサ・トンプソン。いつだってヴァルキリーは最高。もっとジェーンとの絡みが見たかった。ソーの話で仲良くなれると思うよ。しかし、前半のストーリーのまとまりのなさが、後半に響いたのは残念だ。

ガーディアンズとの絡みは楽しいが、あれは全くなくても成立する。あくまでエンドゲームからの繋ぎでしかない。その尺でジェーンの話をもっと描けたのではないか?荒唐無稽さが加速し、収拾がつかなくなっていくMCUにおいて、観光地化したニュー・アスガルドの設定は良かった。ああいうディテールよ。

「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」感想

f:id:StarSpangledMan:20220724184743j:image

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎、観た。田中裕子が可愛すぎる。若いのに妙に疲れた色気!ウエストサイド物語風の「夢」はやたらと見応えあり。二枚目だからと敬遠される男を沢田研二。「二枚目はいいよねえ。妬いちゃうよ」とさくらにだけこぼす寅さんが切ない。螢子の距離感、たしかに惚れそうになる。

「今度あの子に会ったらこんな話しようあんな話もしようそう思ってね、家出るんだ。いざその子の前に座ると全部忘れちゃうんだね。で、ばかみたいに黙りこくってんだよ。そんなてめえの姿が情けなくって、こう涙がこぼれそうになるんだよな。女に惚れてる男の気持ちってそんなもんなんだぞ」。名言!

シリーズも折り返し。だんだん寅さんも「恋の指南役」にまわるパターンが多くなる。が、結婚の事となると「俺わかんねぇけどよ」になっちゃう。そうだよね。どうしてもリリーの顔が浮かんでしまう。寅さんはいつも自分が幸せになる方法だけ知らない。不器用ながらに、人を思うことはできるのに。

しかし、結婚のプロポーズに「我が子のように思ってた(職場の動物園の)チンパンジーがただの動物にしか見えなくなった」とは…。それでいいのか?あんまりよくわからなかったけど、それに応える螢子とは、なんだかんだ波長が合うのだろう。観覧車で告白って、ベタすぎて逆に初めて観た気がする。

「ヘタな二人の恋の話」感想

f:id:StarSpangledMan:20220724184628j:image

ヘタな二人の恋の話、観た。グダグダした恋をグダグダ撮ってどうするんだ。やりたいことは分かるんだけど、全くその通りに撮れていない。比べる対象にすらならないが、先日の「わたし達はおとな」が良かっただけに…。街山みほの濡れ場は頑張っていたので、それ目当ての人は観に行ってはでしょうか。

この「グダグダ」にもツイストが掛かっていて、中盤にひと展開あるのだが、うまく働いていない。中途半端にひねった設定を入れたせいで、逆に軸がブレてしまっている。ダメ人間の恋愛を描くならそれを貫くべしだし、ダメなりにうまくいっていた恋愛を外的要因で崩しても、それはドラマなの?という。

展開作るアイデアがないから足したようにしか見えなかった。あるいは、本当はここからの展開を描きたかったのであれば、おそらく「ヘタな二人の恋の話」というタイトル設定が間違っている。サプライズにするには、描き方もゆるっとし過ぎているし。何がしたいのか分からなかった。