「東京上空いらっしゃいませ」感想(ツイッターより再掲)
東京上空いらっしゃいませ、みた。超絶大傑作。事故死したはずのキャンペーンガールのユウがマネージャーの家に転がり込み…。相米作品の魅力は一つひとつの場面の美しさにあると思う。生きてることを確かめるように影を追いかける二人、結婚式の二次会で「帰れないふたり」を歌うユウ。鳥肌がたった。
牧瀬里穂がとても可愛い!ドタバタと動き回るおてんば感。あいかわらず相米の目線にロリコン趣味を感じるが…。長回しで彼女の躍動を捉える。超雑にハンバーガーつくる厨房のシーンとか、川越で幼なじみに「たくましくなった」と声をかけるところとか、どれを切り取ってもみずみずしい。
先に挙げたふたつの場面は本当にゾクゾクした。スクリーンで見られたことが幸せ。ストーリー自体は大したことないんだけど。映画のおもしろさを改めて実感。けど、あの篆刻の場面の安っぽさはどうにかならないのか。
「風立ちぬ」感想(ツイッターより再掲)
風立ちぬ、みた。傑作。大正から昭和、大震災と太平洋戦争。生きているってすばらしいと心から思える瞬間と、愛する者が空の彼方へと消えていく残酷な現実。菜穂子と手をつなぐ喜びも、ゼロ戦が大空をのびのびと飛ぶ興奮も、すべて儚く消えていく。それでも人生は美しい。生きなくてはならないのです。
たとえ愛した妻がふらっと山の奥へ消えたとしても、心血と愛情を注いで設計したゼロ戦が人殺しの道具になり、ついには一機も帰ってこなかったとしても、二郎は生きなければならない。彼の人生にはたしかに美しい瞬間があった。菜穂子と出会った花咲く野原に吹く風、夢に見た飛行機が目の前で飛ぶ喜び。
この説得力はやはりアニメーションでしか生み出し得ない。画面中を埋め尽くす人の群れのダイナミズムや、汽車が草原を駆け抜ける爽快感、寝室で夫婦ふたり手を握る静かな幸せ。一つひとつの場面で感じた喜びがずーっと心に残る。だから残酷な終わり方でも、美しいものに触れた感覚が心に留まり続ける。
「7月の物語」感想(ツイッターより再掲)
7月の物語、みた。超絶大傑作。短い夏のバカンスにふたりの女は友情を育み、ハンネはほろ苦い挫折とともにフランスを去る。退屈な日常やしがらみと裏表の休日。予期せぬ出会いと交感、他愛ないやり取りから静かに動いていく物語。バカな男たちを笑っていると、突然現実が転がり込んでくる。複雑な味。
第一部は昨日たまたま見た「緑の光線」のよう。男を漁る友人と、消極的な主人公。はじめ相手の名前すらおぼつかなかったふたりが、大したことは起こらないけれど、徐々に距離を詰めていく。街灯の下を一緒に歩き、電車では隣どうし(そういえば冒頭では向かい合わせだった)になる。かすかな変化。
第二部のイタリア男がめちゃくちゃ笑える。冒頭のマスターベーションから始まり、庭先での激昂、ベランダやベッド脇での会話にいたるまで。そして共用スペースでの食事とダンスにユートピア的な空気が広がる。そこになだれ込む現実。早朝の空気もすばらしい。細かな所作や動線に惹かれるものを感じた。
「ユニコーン・ストア」感想(ツイッターより再掲)
ユニコーン・ストア、みた。大人の世界になじめない、ユニコーンと会うことを夢見るキット。親からの期待にも答えられず、他人を失望させてばかりの自分。どうにも上手くいなくて、頭の中をよぎるのは子どもの頃思い描いていた世界。一歩踏み出すカギは、自分を受け入れること。あたたかい映画でした。
キットという女性はなかなかに独創的な感性の持ち主で、すぐに「普通」からはみ出てしまう。だからすぐ外の世界とぶつかっては反発し、居場所を失ってしまうのだ。そんな中で出会うセールスマンとヴァージル。ふたりはキットの輪郭をあぶり出していく。
キットの両親が開くあやしげな集会。「真実の話」をした後、ぶつかり合う親子の会話から見え隠れするユニコーンの意味。キットに投げかける父の言葉が印象的だった。全体的にテンポのずれた笑いで、少々抑揚に欠ける気もするが、ブリー・ラーソンの笑顔が華やかで明るい作品になっていた。
「ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた」感想(ツイッターより再掲)
ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた、みた。音楽の道を諦めた父と、地元を離れる娘。二人の紡ぎだすハンドメイド感あふれるサウンド。音楽を通して、過去と未来に向き合っていく。ライブシーンの多幸感よ!それぞれの人生を選択する清々しさに浸る。面白かったが、パンチに欠ける印象も。