映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「神と共に 第一章:罪と罰」感想

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神と共に 第一章:罪と罰、みた。想像以上のスケールのデカさ!殉職した消防士が7つの地獄の裁判を受け、現世で生まれ変わろうとするが…。使者たちのスタイリッシュな風貌とアクションが気に入った。マン・オブ・スティールみたい。しかし、ちょっと泣かせに走り過ぎかな…。もっとドライでもいい。

ウェブコミックが原作とのことだが、ところどころアメコミ映画の影響を感じた。マ・ドンソクの出し方だったり、終盤の同時並行で進むアクションだったり。やっぱりお金が掛かってる。オープニングの火事現場のカメラワークはとても良かった。非常にアトラクション的。

しかし、主人公があまりに品行方正というか、欲がなさ過ぎるというか。こんなこと言ってる俺は地獄行きだろうか。それこそ仏教説話の登場人物みたいで、血の通った存在に見えない。怨念になってしまう弟や生まれ変わろうと懸命に弁護する使者の方が、よっぽど生々しいキャラクターではないだろうか。

「新感染」でもそうだったが、ここ感動するところですよ、というアピールがちょっとしつこい。そんなこと催促されなくても観客はわかる。もう少しこちらを信用してくれと思った。スケールが大きいのに、ここだけ出来の悪いひと昔前のフジテレビ製作映画みたいだった。第二章の伏線回収に期待!

「ひかりの歌」感想

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ひかりの歌、みた。四首の短歌をもとに、孤独に生きる女性たちの姿を描く。役者どうしの空気感がすさまじくリアルだ。そこにカメラなんかないように振る舞ってる。言葉ではなく、目線の動きやしぐさで画面に映らない彼女たちの人生を語っているような。ある種のドキュメンタリーのような手触り。傑作!

出演者がどれも俺の知らない俳優さんだから、というのはあるかもしれない。しかし、それにしてもみんな本人役で登場しているのかと錯覚してしまう、恐ろしいまでの生々しさ(一部の子役は若干不安定だが)。たとえば今日子がバイト先の同僚にハグを求めた後「いいよ、着替えて」と遠慮気味に催促する。

勢い余って行ってしまった恥ずかしさと、寂しさと、彼女なりの控えめなところが出ていて、これはもう実録映画なんじゃないかと。ただただそこに人が生きている。そして、この映画はやはり言葉にならないところが面白い。好きな先生の絵を描く瞬間、真っ暗な夜道を泣きながらランニングする時間。

写真館で常連客とだまってお茶を飲む絶妙な間、離ればなれの時間を埋め合わせるように、一つひとつ相手の心に触れていく久々のドライブ。ふとした瞬間に漏れる言葉、おそらくクセなんだろうと思えるしぐさ。この豊かさは言語化が難しい。まるで三十一文字であらゆる情景を表現してしまうかのように。

映画の評価の軸って、映像がキレイとか、音楽が感動的とか、お話の展開が意外だとか、いろいろあると思うけど、俺が「ひかりの歌」に惚れたのはやはり「スクリーンの中の人物がたしかに生きている」と確信できたからだと思う。絶対、ここに登場した人たちは日本のどこかに居る。そういう感動があった。

「レベッカ」感想

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レベッカ、みた。大富豪に嫁いだ主人公が亡くなった前妻・レベッカの影に追い回され、精神的に追い詰められていく…。正直前半はもっさりした印象だが、夫とレベッカの関係が明らかになる後半以降、物語が加速。回想シーンもなく、一切姿を現さないレベッカの存在感の大きさよ。最後まで不気味だった。

そしてダンバース夫人の得体の知れなさ。この話の元凶はもちろんレベッカなのだけど、この家政婦もなかなかである。窓際でレベッカに自殺を唆す場面は本当に恐ろしかったし、心の底からなんだコイツ!ってなった。終盤の捜査パート、ファベルの引っかき回しも面白い。話がどこに転がるか分からない。

これはレベッカという亡霊に怯えるふたりの男女の物語であり、そして、レベッカとダンバース夫人のねじくれた愛と主従関係の物語でもある。そういえば「めまい」に通ずるものもあるかもしれない。ヒッチコック作品、やっぱり面白いなあ。「鳥」「裏窓」も見なければ。傑作でした。

触れるの忘れてたけど、ラストの燃え盛る屋敷の禍々しさも素晴らしかった。すべてが灰になる。これで解決で良かったのか。レベッカの部屋が消えてなくなれば、ふたりはこのあと幸せになれるのか。グルグル考えてる間に終わってしまった笑

「家族の肖像」感想

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家族の肖像、みた。孤独な老教授と若者の交感。お屋敷はセットらしいが、凄まじいディテール。衣装も含めて世界が完成されている。お話はヘルムート・バーガーの使い方といい、耽美で厭世的な空気感といい、いつものヴィコンティだなと思う。何作か見たけど、いまいちハマらんなあ。次は「山猫」か。

「ライジング若冲 天才かく覚醒せり」感想

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ライジン若冲 天才かく覚醒せり、みた。若冲と大典の友情を描く。これはまさしくラブストーリー。売茶翁のキャラが良い。ああいう変人がいたこと、また、それが記録に残ってるのが面白い。相国寺動植綵絵、見たことあるけどあれホントにすごいんですよねえ。でも、ドラマとしては演出がショボい。

「バルカン超特急」感想

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バルカン超特急、面白かった。特急でひとりの婦人が消えた…アイリスとギルバートの凸凹コンビの捜査が楽しい。絶妙な間とすれ違いがコミカル。正体が明かされて以降の黒幕の作戦は杜撰すぎるが、いきなり血生臭くなるラストの銃撃戦で盛り返す。マーガレット・ロックウッドかわいいな!

冒頭の宿の場面、ギルバートが嫌がらせでアイリスの部屋に上がり込んでくるのはどうかと思うが…。たった一晩で「生意気な人!」といちゃつくまでにいくわけですね…。英国紳士の目線からお話がスタートするのは謎だが、最初の20分でキャラ造形を整理しきる脚本・演出のうまさよ

宿の廊下でミス・フロイとアイリスが洒落た会話を交わす場面、とってもいいですね。思えばここから全てが始まっていた。英国紳士の見下す感じのイヤらしさ、あまりに型通りな行動パターンが面白い。もはやセルフパロディ。1時間35分と尺もコンパクトでいい。あと遠景パートがほぼミニチュア撮影!

「螺旋銀河」感想

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螺旋銀河、みた。新年早々すばらしい作品に出会った!アントニムなふたりの女が反発しては惹かれ合い、物語の中の物語が、映画全体を飲み込む。もしあなたの体に大きな穴が空いていたとしたら、わたしの体の同じところに、同じ大きさの穴を開けたい。深夜のコインランドリーという小宇宙で起こる奇跡。

73分という尺もちょうどいい。目の冴えるようなショットがあるわけではないが、後半はそのシンプルな演出が良い意味で効いてくる。あまり上手いとは言えない主演ふたりの芝居も、ラジオブースの場面では乗ってた。しかし、東京と大阪でふたつのロケ地を特に説明なく横断するのは何なんだ笑 混乱した。

主要キャラみんな頑固でそんなに優しい人間ではない、というのが良い。綾と幸子がトイレの鏡の前で出会うファーストカット。綾のおもわず目を奪われてしまう堂々たる美しさ。一方、幸子もまた綾にないものを持っている。ないものねだり。しかし人は嫌いなものに惹かれることだってある。不思議な因果。

「王国(あるいはその家について)」の方が実験的かつ前衛的なのだけれど、あれは頭で楽しむ映画という感じがする。この「螺旋銀河」の方がお話としてはシンプルに面白く、オチのオシャレさも含めて好みだ。いつか劇場で掛かったらもう一度みたい。いきなりことしの旧作ベスト候補。大傑作!