映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アルピニスト」感想

アルピニスト、観た。命綱なしのクライミングに挑む若き天才、マーク・アンドレ・ルクレールの挑戦を追う。アレックス・オドルノの「フリーソロ」に比べると映像的な見応えは少ないが、密着を拒む孤高の天才の生き様、そしてそんな彼との距離感が興味深いド…

「ビリーバーズ」感想

ビリーバーズ、観た。無人島で修行を積む三人のカルト信者が、徐々にその欲望を曝け出していく…。面白かったけど突き抜けるものがなく刺さらなかった。もっと嫌悪感煽られると思ったんだけどね。真夏の炎天下、捉えどころのない浮遊感は悪くなかったが。スイ…

「希望と絶望 その涙を誰も知らない」感想

希望と絶望 その涙を誰も知らない、観た。コロナ禍に翻弄された日向坂46の二年間に迫る。まさしく自分がハマった時期から現在までの期間、その裏側とメンバーたちのプロ意識を知られたのは良かった。この頑張りに自分は支えられたんだなあ。しかし、一方でド…

「幻の蛍」感想

幻の蛍、観た。両親の離婚により離れ離れにくらす姉妹が、ホタルを探しに行くひと夏の物語。大きな起伏はないが、たしかに、ゆっくりと変化していく。内向的な姉と、愛嬌ふりまく妹の距離感が面白い。こういう女の子もクラスに居たな、なんて思いながら。夢…

「ソー:ラブ&サンダー」感想

ソー:ラブ&サンダー、観た。ワイティティ節炸裂。楽しい。しかし、焦点がぼやけていて「もっと面白くなったのに〜」と思ってしまった。傲慢な神々は、富を独り占めする超富裕層のメタファーだ。C・ベール演じるゴッドブッチャーのヴィランとしての強度がこ…

「男はつらいよ 花も嵐も寅次郎」感想

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎、観た。田中裕子が可愛すぎる。若いのに妙に疲れた色気!ウエストサイド物語風の「夢」はやたらと見応えあり。二枚目だからと敬遠される男を沢田研二。「二枚目はいいよねえ。妬いちゃうよ」とさくらにだけこぼす寅さんが切ない…

「ヘタな二人の恋の話」感想

ヘタな二人の恋の話、観た。グダグダした恋をグダグダ撮ってどうするんだ。やりたいことは分かるんだけど、全くその通りに撮れていない。比べる対象にすらならないが、先日の「わたし達はおとな」が良かっただけに…。街山みほの濡れ場は頑張っていたので、そ…

「モガディシュ 脱出までの14日間」感想

モガディシュ 脱出までの14日間、面白かった。ソマリア内戦で混乱に陥ったモガディシュ。南北の外交官は渋々手を組み脱出を試みるが…。同じ民族でありながら相入れない両者のねじくれた関係が時に熱く、時に切ない。南北モノはハズレなしだが、日本はこの分…

「リコリス・ピザ」感想

リコリス・ピザ、観た。いやぁ、楽しかったねえ。くっついたり離れたりを繰り返すゲイリーとアラナ。だから展開も無軌道で、良くも悪くもつながりを欠くが、オープニングの二人の出会いの場面からずっと最高だ。アラナ・ハイムとクーパー・ホフマンはその佇…

「わたしは最悪。」感想

「わたしは最悪。」を観た。「出会ってから」を描くロマコメ。私の幸せがあなたの幸せとは限らない。現在の正解が将来の不正解になることもある。かと言って、この歳で何かを「待つ」余裕はない…。満たされなさを抱えたまま突っ走るが、いつも良い意味で「テ…

「スープとイデオロギー」感想

スープとイデオロギー、観た。在日コリアン2世の監督が、済州島の虐殺事件を生き抜いた母の過去を探るドキュメンタリー。徐々にアルツハイマーに飲まれていく母。饒舌だった彼女がどんどん「穏やか」になっていく。比例するように明かされるあまりに酷い真実…

「PLAN75」感想

PLAN75、観た。現代版「姥捨山」が導入された近未来の日本を描く。システマティックに「殺人」を隠匿したこの制度は、冒頭の犯罪者と何ら変わらないことを示唆する。未来というより現在の話だ。手続きのあっけなさや、都合の良い時だけ手際のいいお役所仕事…

「恋は光」感想

恋は光、観た。恋の矢印があちこちに飛び交う映画だが、その中でも特に北代さん!言葉にせずぐっと堪える儚さ、近くも遠くもない距離の可笑しさ。西野七瀬の魅力が爆発してる。変人でありながらフラットな物語の案内人を、神尾楓珠が好演。岡山の景色も美し…

「メタモルフォーゼの縁側」感想

メタモルフォーゼの縁側、観た。劇場を後にして、あの場所に帰りたいなあって思い出す映画は、正解だと思う。俺はあの縁側に帰りたい。縁側を通る心地よい空気や、雪さんとのおだやかな時間、同級生を「ずるい」と思ってしまうざらっとした感情。すべて「好…

「はい、泳げません」感想

「はい、泳げません」を観た。心に傷を負った哲学者がスイミングスクールに通い始める…。ヘンテコなバランス感覚の映画だ。コメディとシリアスを行ったり来たり。なにより物語の契機となるはずの静香先生との「出会い」が弱い。なぜみんな小鳥遊に手を差し伸…

「トップガン マーヴェリック」感想

トップガン マーヴェリック、観た。面白かった!生死ギリギリの世界で戦うパイロットたち。フツーに生きてたら叶わない世界を覗くのが映画の楽しみだとしたら、こんなにも映画的な作品はない。そして老いと向き合うトム・クルーズが、死にゆく映画の世界で生…

「わたし達はおとな」感想

わたし達はおとな、観た。望まぬ妊娠を機にぐちゃぐちゃになるクソ大学生の恋愛模様を描く。時系列を入れ替えたところでミリも興味は湧かないが、なぜか面白くて最後まで食い付いてしまう。恋愛の厭な部分だけ煮詰めた今泉力哉映画といえる。大学一年生に必…

「FLEE フリー」感想

FLEE フリー、観た。アフガニスタン難民が誰にも明かすことができなかった半生を語るドキュメンタリー。取材者保護のためのアニメーション表現が、この想像を絶する陰惨な現実との橋渡しになる。抽象化されるからこそ、その奥行きの解釈をこちらに委ねてくれ…

「クロステイル 〜探偵教室〜」感想

クロステイル 〜探偵教室〜、全話観た。今期ドラマはほとんど途中離脱したけど、ゆる〜い深夜ドラマ感にハマって唯一完走。鈴鹿央士の童顔と声のギャップにやられる。それぞれのキャラに見せ場があるからいつのまにか好きになってるし、最終回の収束していく…

「ニューオーダー」感想

ニューオーダー、観た。幸せなはずの結婚パーティーになだれ込む暴徒。経済格差は限界を迎え、社会崩壊の時が訪れていた…。この題材を「ディストピアスリラー」としてエンタメ化することに抵抗感を覚えつつ、身も蓋もない「新しい秩序」の着地点には、不快や…

「パリ13区」感想

パリ13区、観た。面白かった。男と女がくっついたり、離れたり。奔放なわりに後腐れなしとはいかず、いちどその温もりを知ってしまうと、一人寝る夜は寂しいし、終わりなき空虚と向き合う羽目になる。エミリーがめんどくさ過ぎるのにヒロインとして魅力的な…

「20歳のソウル」感想

20歳のソウル、観た。野球部のために応援歌を作った少年は、恩師のような先生になろうと誓うが…。いわゆる「難病モノ」であり、お世辞にも話のテンポが良いとは言えない。しかし、これが実話であり、こんなにも愛に囲まれて生きた少年がたしかにいた、という…

「ハケンアニメ!」感想

ハケンアニメ!、観た。キャリア悩み中の自分にグサグサ刺さりました。吉岡里帆が最初のカットからどよーんとした背中でペンタブに向かうのがもう最高ですね。静かに燃える暑苦しい女を演じさせたら彼女の右に出る者はいない。一人でできる仕事なんてない。…

「シン・ウルトラマン」感想

シン・ウルトラマン、観た。一週間寝かせてもうまく感想まとまらず。シン・ゴジラの精密なセリフまわしや同時代性はどこへやら。作り手の趣味やこだわりは全面に出ているが、だったらもっとちゃんと撮れよと。チグハグは否めないが、外星人のロマンや銀色の…

「マイ・ニューヨーク・ダイアリー」感想

マイ・ニューヨーク・ダイアリー、観た。マーガレット・クアリー演じる主人公の初々しくも芯の強いキャラが素敵。しかしそれ以上にシガニー・ウィーバーの渋い演技よ。ただしこの映画ならではの色は薄かったかな。「ライ麦畑でつかまえて」ってそんなに面白…

「私ときどきレッサーパンダ」感想

私ときどきレッサーパンダ、観た。傑作!ディズニー/ピクサーの「家族信仰」に楔を打ち込むエポックメイキング的作品。親の目から逃げられない息苦しさや、身体的変化への嫌悪を「どでかいレッサーパンダに変身する」というポップな設定で軽やかにスケッチ…

「死刑にいたる病」感想

死刑にいたる病、観た。目玉がビー玉になった阿部サダヲが怖すぎる。人間の真理やタブーへの踏み込みは期待ほどではなく、若干息切れはするものの、最後まで楽しめた。ガラスを隔ているのにどんどん飲み込まれていく面会の場面がほんとうに面白い。ワクワク…

「マイスモールランド」感想

マイスモールランド、観た。ことしベストの一本。在留資格を失ったクルド人家族の生活を描く。優しさとか思いやりの話ではない。サーリャたちに寄り添う多くの「善良」な市民が登場するが、そもそもこの国の制度を支持しているのは私たち自身なのだ。嵐莉菜…

「そこにいようとおもう(MIRRORLIAR FILMS Season3)」感想

そこにいようとおもう(MIRRORLIAR FILMS Season3)、観た。地元の友人の葬式、帰りのタクシーでの旧友たちのすれ違いが描かれる。ほとんどずっと吉村界人の顔しか映らないが、懐かしい日々を否定され、苦々しさや寂しさが去来していく様を見事に表現してい…

「可愛かった犬、あんこ(MIRRORLIAR FILMS Season3)」感想

可愛かった犬、あんこ(MIRRORLIAR FILMS Season3)、観た。脚本が「ひらいて」の首藤凛。愛犬の死をきっかけに帰省した姉と、実家暮らしの妹とのギクシャクした関係。ふたりのドライな会話が生々しい。後半に少し飛躍を加えることで、軽やかな着地を見せる…