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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「暗黒街の顔役」感想:盛者必衰の理

こんにちは。じゅぺです。

今回は「暗黒街の顔役」について。

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さいきんハワード・ホークスの映画をいくつか見ているのですが、本作もそのうちの一つです。このあいだは「三つ数えろ」をレビューしたので、ぜひそちらもご覧ください。

「暗黒街の顔役」の原題は「スカーフェイス」です。「傷のある顔」みたいな意味ですが、これは禁酒法時代に栄華を極めたマフィアのドン、アル・カポネの別名です。そして本作はアル・パチーノ主演で一度リメイクされています。邦題は「スカーフェイス」で、こちらの方が馴染みあるという方も多いでしょう。しかし、冒頭に「これは政府の無策の告発である!」みたいな政治的メッセージが出てくるのには驚きました。そういう時代だったんですね。今やったらトランプがツイッターで発狂することでしょう。

お話としては、ニューヨークの北と南でマフィアたちが主権争いをする中、一度は頂点に登りつめたものの、自ら招いた失態で没落していくひとりの男の物語です。盛者必衰の理。栄枯盛衰を描いたあらゆるマフィア映画の原型的作品です。シンプルかつ洗練された内容はスリル満点。少々キャラクターの顔が似ていて見分けがつかなかったのが難点ですが、すばらしい作品になっています。

個人的に見どころだったのが、マフィアの死に方のバリエーションですね。パーティーでたのしくおしゃべりしていたら突然マシンガンを乱射されたりとか、みんなで街中でたむろってるところに仲間の死体がゴロッと車から投げ捨てられたりとか。恐ろしかったのが、ボーリングを楽しんでいたらピンの向こう側から銃弾が飛んでくるところですね。そんな死に方ありますか。しかし、これが実話を元にした話だというのだから、ほんとうに恐ろしいですねえ。いちばん盛り上がる(?)死に方は、やはりラストの立てこもりでしょう。警官に囲まれ、錯乱状態になりながら、「鉄の扉があるから安心だ」とか言っていたら、女は流れ弾で死んでしまった。絶望に打ちひしがれながら、男はヨタヨタと階段を降りて、最後は蜂の巣にされてしまいます。「おまえは銃がなければただの臆病者だ」と突きつける刑事の言葉が残酷です。あれだけ一生懸命殺しあって、権力を手に入れようともがいて、人生の終わりはあっさり虫けらみたいに地面でのたうち回って。人生ってなんなんだろう、戦いってなんなんだろうと、そんな空虚な後味を残すのもまた、この映画の豊かなところでしょう。傑作です。