映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ブラック・スワン」感想:鏡に映る狂気

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ブラック・スワン」の感想について。

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ブラック・スワン」は、「白鳥の湖」の主演に抜擢されたバレリーナのニナが、純潔な白鳥と蠱惑的な黒鳥を演じるプレッシャーに押しつぶされ、精神崩壊していく様を描く作品です。

精神のバランスが崩れていく過程が、ときにナタリー・ポートマンの迫真の演技で、またときに悪魔的なビジュアルで、恐ろしくも美しく見描かれ、たっぷり観客をいたぶります。印象的なのは鏡の使い方でしょうか。徐々に自分の顔が「他人」に見えてくるんですね。母や監督の期待に応え、まわりの嫉妬の目線に耐え、「完璧」を目指すあまりに狂っていくニナ。だんだん狂気に飲み込まれ、自分が自分から分離していく。やがてばらばらになった自分どうしで殺し合いになってしまう。破滅に向かって突っ走っていきます。

ニナを演じたナタリー・ポートマンは、徹底した役づくりが評価されてアカデミー主演女優賞を受賞しました。肉体的にも精神的にも納得のパフォーマンスを披露しています。最初は弱々しかったニナが、やがて役に飲み込まれ、気の狂った目つきをするようになっていく、その変化がすさまじい。同じ人物が演じているとは思えません。すばらしい演技だと思いました。また、幼少期にバレー経験があるらしく、舞台での存在感にも説得力がありましたね。

どうでもですが、ささくれを剥いたらぴーって指の真ん中の関節ぐらいまで皮が裂けちゃうシーンが、ほんとに痛かったです。ああいう苦痛がリアルに想像できてしまうのは苦手です。ヘタなスプラッター描写よりも。この映画の嫌らしさって、結局、ここに詰まってるんじゃないかと思います。ニナの感じる痛みや苦しみ、吐き気みたいなものが、生々しく自分の体内で再生されてしまうような。いい映画ですが、もう見たくないですねえ。