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「判決、ふたつの希望」感想:過ちを認める勇気

こんにちは。じゅぺです。

今回は「判決、ふたつの希望」について。

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判決、ふたつの希望」は、ほんの小さな近所のいざこざが国中を巻き込んだ民族紛争に発展してしまうさまを描く作品です。アカデミー外国語映画賞にノミネートされるなど、評価も高く、非常に楽しみにしていた作品でした。製作国がレバノンというのもレアですよね。じっさい期待通りの良作でした。

この映画の背景にあるのはレバノン人とパレスチナから難民としてやってきた人たちの歴史的・文化的な対立で、宣伝等でも大きくクローズアップされていますが、あくまで描いているのは二人の男の自然な感情なんですよね。短気な性格が災いしてささいなことを面倒なトラブルにしてしまう。なんとなく感じが悪い相手に対して素直になれず、謝れない。大ごとになってしまい、今さら頭を下げるのも恥ずかしいからと意地を張ってしまう。本心では酷いことを言ってしまったと思い始めているけれど、もはや引き返せないところまで来てしまった。このような感情の揺れやもつれ、経験したことがある人も多いのではないでしょうか。たしかに戦争と民族対立の記憶が事件をよりややこしいものにしているけれど、同じような状況に置かれたら、たぶん誰もが同じような感情の軌跡を辿るのではないかと思います。サラーメもハンナも、つねに正しい選択をするわけではない。だけど、かといってやたらと怒りや憎悪をまき散らしているわけでもない。ちょっとしたボタンの掛け違いから始まったことなのです。ここに絶対の正義などというものは存在しません。自分だってサラーメやハンナのように怒り、動揺し、不安を感じ、苦しむかもしれない。誰かを傷つけたら絶対に後悔するんです。自分が言ってしまった言葉、やってしまったことを取り消したいという気持ちに襲われると思うのです。そういうリアルな感触こそ、この映画の最大の魅力だと思います。

しかし、物語は対立の先の希望も見せています。後悔を引きずるサラーメとハンナが徐々に歩み寄りを見せていくのです。クライマックスに明かされるハンナの過去と、あえて「殴られる」ことでわだかまりをなくそうとしたサラーメの行動ももちろんですが、私がぐっと来たのは裁判のとあるシーン。サラーメの普段の言動が紹介された際、「中国製は使えない」という言葉に一瞬だけハンナが反応するカットがあります。同じ技術者として、品質にこだわるプロのプライドに自分と同じものを感じたのです。冒頭、ハンナも「中国製は使えない」と嘆いているシーンがあり、伏線になっているんですね。さらにこの後、サラーメの故障した車をハンナが黙って修理してあげる場面もありました。もし出会い方が違ったら、彼らは友だちになれていたかもしれません。ほんのちょっとのすれ違いさえなければ、そして、自分の過ちを認めて一歩踏み出す勇気さえあれば。判決後に穏やかな目線をかわすハンナとサラーメに、一筋の希望の光を見ました。