映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

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「プーと大人になった僕」感想:クリストファー・ロビンとプーさんの間にだけ流れる特別な時間

こんにちは。じゅぺです。

今回は「プーと大人になった僕」について。

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プーと大人になった僕」は、「くまのプーさん」のその後、大人になったクリストファー・ロビンとプーさんたちの再会を描くヒューマンドラマです。

僕は、あまり「くまのプーさん」の原作小説も、ディズニーによるアニメ化作品も、それほど思い入れはありません。むかしテレビ東京で放映していたディズニーの番組(たしかよゐこの濱口が出ていました)で時々見ていた記憶はあるのですが…その程度ですね。しかし、僕みたいな人間でも「100エイカーの森」でクリストファー・ロビンとプーさんたちが遊んでいた、あの光景を思い浮かべることができれば、不思議とノスタルジーに浸れてしまう映画になっています。

戦争、結婚、就職…。「大人」になっていくにつれてすり減り、プーたちとの楽しかった日々を思い出の片隅に追いやってしまったクリストファー・ロビン。色あせた過去を振り返るエピローグがとても切なかったです。特に気になってしまったのが、戦争のパート。時代的にあたり前なのですが、クリストファー・ロビン第二次世界大戦に出征しています。ここではと思ってしまったのが、クリストファー・ロビンは戦争で「人を殺したのか」どうかということ。もし、一人でも殺していたのだとしたら…「くまのプーさん」そのものの見方もガラリと変わって来るように思います。ここはテンポよくさばいていましたが、僕的にはここをもう少し細かく描いてほしかった。もしくは、ここで描かれている過去が、現代のクリストファー・ロビンのあり方に影響していることを、もう少し重く描いてほしかった。このあとのプーさんとの再会以降の話がとんとん拍子でどうも味気ないのは、彼の人生の重みを感じられるような内容になっていないからではないかと思います。

とはいえ、プーさんが出てきてからはひたすら癒されますね。どこまでもマイペースなプーさんの「"なにもしない"をしよう」が沁みます。また、ちょっと薄汚れて使い込まれた感じすらあるぬいぐるみの風貌が愛らしいです。もふもふしたくなります。クリストファー・ロビンが辛くなって抱きつきながら寝てしまうのも納得です。ぬいぐるみが欲しくなりましたもん。

あと、「100エイカーの森」では当然クリストファー・ロビンは人気者なわけですけど、ティガーやイーヨーが彼を囲っているとき、プーさんはいつもちょっと距離を置いたところからみんなを見つめているんですよね。そして、自分のもとにクリストファー・ロビンがやって来るのを待っている。プーさんとクリストファー・ロビンの会話は、二人きりじゃなきゃダメなんです。彼らの時間は、彼らのあいだでだけ流れるのです。二人の会話には、「100エイカーの森」の愉快な仲間たちも、クリストファー・ロビンの愛する妻や娘も、割り込めません。二人のテンポやリズムは誰にも邪魔できないのです。

夏が終わり涼しくなり始めたこの時期にぴったりな、優しい映画だったと思います。しかし、先ほど指摘したように、クリストファー・ロビンの描写にそれほど深みを感じなかったため(もちろんユアン・マクレガーの演技は最高でした!)、この映画そのものが「くまのプーさん」原作である必要を見出せなかったんですよね。正直、クリストファー・ロビンとプーさんを他のものに置き換えても成立する話だったかもなという気がしてしまいます。まあ、それほど思い入れのない、詳しい知識のない僕の意見なので、あまりあてにはなりませんが。