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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「クリーピー 偽りの隣人」感想:逃げることのできない焦りと絶望

こんにちは。じゅぺです。

今回は「クリーピー 偽りの隣人」について。

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クリーピー 偽りの隣人」は2016年公開のホラー映画です。監督は「CURE」の黒沢清

彼の作品は去年「散歩する侵略者」を劇場で見ました。じわじわと日常が侵食され、気付いたときには根っこから腐っていた、というのがなんとも恐ろしい映画でした。もともと舞台劇が原作らしいのですが、そのせいか、やはり映像にすると地味な印象を受けますね。しかし、全体を貫く氷のように鋭い冷たい映像の質感はすばらしく、この監督が評価される理由が分かった気がします。

で、今回みた「クリーピー 偽りの隣人」ですが、こちらも平凡だったはずの日々が壊れていく焦りと恐怖を描いた作品になっています。言ってしまえば、究極のご近所トラブル映画ですよね、これ。「あれ、この人おかしいかも?」から始まる違和感が、徐々に大きくなっていきます。引っ越し先は選べても、隣人を選ぶのは難しいし、新築で家を買ってしまったのだから、簡単に逃げることもできません。明らかに怪しいとわかっているのに真相にたどり着くことはなく、どんどん事態が悪化するのはわかっていても、何も変えることができない。追い込まれていくうちに募っていく焦りと絶望。

最後の方は本当に予想外の展開で、この流れは「ドント・ブリーズ」も思い出しました。そして、狂気の隣人・西野を演じる香川照之の気持ち悪さが臨界点を超えていましたね。あのぎょろっとした目が不快です。いい俳優さんですよね。また、主人公の高倉を演じる西島秀俊も、あいかわらず抑揚のない、うまいんだか下手なんだかわからない演技をしますが、黒沢清の世界観にはぴったりです。犯罪者の心理を追いかけることを趣味としているあたり、彼もまた西野に近しい部分を持っているのでしょう。どことなくズレていて、彼にも気持ち悪さを感じました。

全体的に不快度高めの映画でしたが、見ている自分も追い詰められ、胃がキリキリとする感覚はなんともいえない気持ちよさがありました。もっと黒沢清の世界を知りたくなりました。