映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「あと1センチの恋」感想:希望と不安と失望の間で揺れ続ける恋心

こんにちは。じゅぺです。

今回は「あと1センチの恋」について。

f:id:StarSpangledMan:20180910002641j:image

「あと1センチの恋」はリリー・コリンズ主演の恋愛映画です。彼女はふとめのナチュラルな眉毛がとってもキュートで、大好きな女優さんです。フィルモグラフィを見ると、意外とそんなにたくさんの映画に出ていない(すくなくとも日本では公開されていない)のですが、僕は「ハッピーエンドが書けるまで」が大好きです。彼女には独特の間の持たせ方があって、非常にシュールなテンポの笑いを生み出す力があると思ってます。今回の「あと1センチの恋」でも一夜限りの相手に妊娠させられ、夢を諦めてイングルマザーとして奮闘するという、設定だけ聞くとハードな人生の主人公を演じていますが、もちろん一人で働きながら子育てする苦労はあれど、くよくよ悩んだりせず、自分の人生を楽しむ素敵な女性を演じています。悲壮感を出さずにこういったキャラクターの魅力を絞り出せるというのは、すばらしい演技のセンスだなと思いますし、ますますファンになりましたね。

この映画は、幼馴染で本当は両思いだったのに、パーティで別々の相手に誘われたことで永遠に平行線の人生を歩むことになってしまった男女のお話です。僕は「恋人たちの予感」や「ビフォア・シリーズ」が大好物で、長いこと我慢して、なんどもあきらめようとしながら、それでもやっぱり僕が/私が選びたいのはあなたなんだと二人の気持ちと向き合っていく、そういう映画に惹かれてしまうんですよね。だから、ロージーとアレックスがおたがい相手の本心にうすうす気づいているのに、「親友」の関係を壊したくなくて一歩引いてしまい、どんどんチャンスを逃してしまうのが、本当に切なくて、苦しくてたまらなかったです。そしてそんな二人のすれ違いを悶々とした気持ちで、家のソファの上でじたばたしながら見守るのも、とっても楽しいし、気持ちいいです笑 まあいってしまえばこの手の映画はオチが読めているので、ある程度安心したうえで入り込めますよね。友だちの恋愛話を聞くような、そういうノリで見られる映画です。

なかでも苦しかったのは、アレックスを空港で見送るシーンですね。あのロージーの目が忘れられません。なにかが起きることへの期待、変化が不幸をもたらすのではないかとおびえる気持ち、どうか向こうも同じ気持ちであってほしいという願いと不安。そして、アレックスにどれだけ近づいてもふたりの間には広い溝があって、唇を重ね合うことはないのだという失望。さまざまな感情が入り混じり、苦しくてもアレックスとの友情は壊したくないとぐっと我慢するロージーの心の内を思うと、切なくてしかたありません。本当にやるせない。映画を見ている間、なんどもこのときのロージーの顔がフラッシュバックしました。だからこそ、あの最高の(予定調和だけど)ハッピーエンドですべて報われるのが、とってもきもちいい。きっと二人はこれまで失ってきた時間を取り戻すように、これまでの何倍もの愛情を注いて、幸せな人生を歩んでいくんだろうな。こういう希望を見せてくれるのって、まさしく映画だなと思います。いい映画でした。