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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「霧の波止場」感想:負け犬が見た夢

こんにちは。じゅぺです。

今回は「霧の波止場」について。

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「霧の波止場」は1949年公開のフランス映画です。監督はマルセル・カルネ

なにもかも嫌になっていた脱走兵のジャンが、逃走先の港街で美しい少女・ネリーと出会い、人生のよろこびを知り、生きる希望を持ちはじめる。しかし、ネリーを狙う男は他にもいて、徐々にジャンとネリーの関係を邪魔するようになる…というお話。

要するにジャンは軍隊を抜け出し、人生を諦めようとした「負け組」です。場末の酒場で出会った美女と過ごすという希望が、なんとも美しく儚い。またネリーを演じるミシェル・モルガンの顔が現実離れした目鼻立ちで、決して背も高くなく美男子ともいえないジャンの夢が遠くにあることを印象付けます。なによりタイトルにある「霧」がジャンとネリーの行く末を暗示しています。まるでここが世界の果てであるかのように波止場に立ち込める、ぶあつい霧。場末のバー、ザベールの地下室、霧に包まれた波止場の船。どこを切り取っても閉塞感があり、どれだけ希望を抱いてもここから先には飛び立てなさそうな重い空気が見る者の心を押しつぶしていきます。ラストカットがいつまでも頭にこびりついています。大傑作です。