映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ひまわり」感想:美しく輝くひまわりに込められた意味

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ひまわり」について。

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「ひまわり」は、ヴィットリオ・デ・シーカ監督の描く戦争で引き裂かれた夫婦の物語です。

デ・シーカ監督の作品は「自転車泥棒」と「ウンベルト・D」を見ました。どちらも貧しさや孤独にあえぎ、生きる意味さえ見失いかけたとしても、生きていかなければならないし、生活は続いていくのだという現実の厳しさを描いています。見ていて大変つらくなる一方、人間のたくましさを信頼する、たしかなヒューマニズムにも支えられている作品でした。

「ひまわり」も、第二次世界大戦という歴史の大きなうねりに翻弄され、すれ違っていく二人の男女の悲哀を描いています。

この映画はタイトルの通り、ひまわりが強烈なインパクトを残します。彼らの悲劇的な運命と、海のようにどこまでも広がる美しいひまわり畑の対比は、非常に残酷なコントラストになっています。たとえば、かつて戦場だったこの土地の下におびただしい数の死体が埋まっているという事実は、地上でまぶしく輝くひまわりによって逆説的に強調され、グロテスクな死のイメージを見る者に植えつけます。さらに、ドイツ軍と死闘を繰り広げた戦時中の場面の冬の雪原と、夏らしさを感じさせる現在のひまわり畑の対比も、季節の移り変わりを感じさせ、時間の流れは不可逆で、人間は決してそれに逆らうことはできないのだということを改めて突きつけてくるかのようです。もっと深く読み込めば、一度別々の道を歩み始めてしまった男と女の人生が再び交わることはないという、本作の結末を暗示しているようでもあります。本作でひまわりの持つ意味はかなり多層的に彫り込まれていて、かなり解釈のしがいがあるのではないでしょうか。

また、全体を通して感じるのは、男はいつまでも昔の女を追い、女はある段階できっぱりと区切りをつけ、新しい環境に馴染んでいく、それが世の常だということです。不思議なことに、どんな国や時代の映画を見ても、文学を読んでも、そして、じっさいにまわりの人々を見ても、そういうものなのだということです。3回ある駅での「別れ」の変化は、どの世界でも男と女がたどる道をなぞるかのようで、たいへん印象的でした。見る時期や気分によって感想が変わりそうな映画です。