映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「男はつらいよ 寅次郎夢枕」感想:寅さんの幸せってなんだろう

こんにちは。じゅぺです。

今回は「男はつらいよ 寅次郎夢枕」について。

f:id:StarSpangledMan:20180902120955j:image

男はつらいよ 寅次郎夢枕」は「男はつらいよ」シリーズ第10作目です。

今回のマドンナは八千草薫です。若いですねえ。バツイチの美容師・千代という設定。ちょっぴり漂うくたびれ感が艶っぽいです。前作「柴又慕情」の吉永小百合演じるマドンナとは対照的な魅力を放っていて楽しいですね。こんなに素敵な出会いばかりしているのだから、たしかに寅さんも惚れっぽくなりますよ。

今回の恋敵は米倉斉加年。インテリで口下手な研究者・岡倉を演じています。寅さんと岡倉先生の応酬が笑えます。ふたりともちょっと幼稚で、恋には奥手。お互い千代のことが気になっているのに素直になれないのが可愛い。特に岡倉先生をからかう寅さんなんて、ほんとは自分も千代が気になって仕方ないくせに。小学生ですね、ほとんど。

けっきょく寅さんの恋が実りません。実ったらシリーズが終わってしまいます。しかし、今回は千代の方も寅さんに好感を抱いていました。なのに、これまたいつも通り、お人好しな性格が寅さん自身には災いして、恋心はすれ違ってしまうんですね。ひとの幸せを願えるのが寅さんのいいところであり、だからこそ、彼は自分の幸せを手放してしまう。この不器用さが魅力ですね。親戚にいたら厄介だけど。

「奮闘篇」もですが、寅さんに「夫失格」の烙印を押すまわりも残酷だよなあと思います。千代が寅さんへの想いを打ち明けても、誰も真面目に取り合いません。悔しいですねえ。たしかに妻になる側の将来まで思いを巡らせれば、その気持ちもわかるんですけど。柴又のみんなはとても優しく、温かく、面倒見がいいけど、寅さんのようなヤクザ者が自分だけの幸せを高める空間ではないんですよね。良くも悪くも、世話焼きだから、寅さんを彼らの考える「枠」に収めようとしてしまうんですよね。彼らなりに考える、そして自分たちの人生経験から言ってベストだろうと思われる寅さんの「幸せ」と、寅さんが寅さんなりに考える「幸せ」って、きっと違うんだろうなあと思います。かといって寅さんの中に確固たる「幸せ」像があるわけでもなさそうですけど。彼はきっと刹那に生きる人だと思います。