「スモーク」感想:「嘘」に救いを求める人たち
こんにちは。じゅぺです。
今回は「スモーク」について。
「スモーク」はオギーの営むタバコ屋に集まる男たちの人生を描くヒューマンドラマです。主演はハーヴェイ・カイテル。
この映画で描かれているのは、人は心の痛みとどう向き合うのか、ということだと思います。大切な人と離れ離れになる悲しみや、愛を失って感じる孤独。長く生きていれば、遅かれ早かれこうした困難に向き合うことになるでしょう。僕はまだ経験したことがないけれど、きっと辛くてたまらないだろうという想像はつきます。オギーやポール、トーマスといった本作の登場人物はみんな愛する人との悲しい別れを経験し、苦しみを抱えながら生きています。
彼らが現実と向き合い、折り合いをつける中で重要となってくるのが「嘘」です。嘘をつかなければ、嘘を信じなければ、どう頑張っても耐えられない。彼らは嘘に救いや安心を求めます。
でも、それは決して弱さからくるものではありません。むしろ強さであり、人間の持つ根源的な優しさだと思うのです。明らかに嘘だとわかるものでも、それで救われる人がいる。それが現実か嘘なのかが問題なのではありません。その人の弱さや悲しみにいかに寄り添い、近づけるかなのです。生きることの痛みや苦しみを知ればこそ、人は静かに手を差し伸べ、助け合えるのだと思います。
同情とか哀れみではない。ただ、側にいてあげるということ、それが優しさなのだという哲学がこの映画にはあると思います。やはりラストのエピソードは衝撃的でした。とても温かくて美しいお話なのに、同時に切なくて、寂しいのです。寓話的だが、この物語のエッセンスが詰まっているように思いました。すばらしい映画です。