映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「女が階段を上る時」感想:ママは階段を上る時なにを思うか

こんにちは。じゅぺです。

今回は「女が階段を上る時」について。

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女が階段を上る時」は、三十路を迎えた銀座の高級クラブの雇われママの苦悩を描く成瀬巳喜男の作品です。成瀬巳喜男といえば、高峰秀子とのタッグによる「女性映画」ですよね。「めし」と「浮雲」は見ましたが、どちらもとてもすばらしい作品でした。「女が階段を上る時」もこれらに連なる作品で、若さよりは老いが目立ちはじめた女の生きづらさ、男社会との摩擦を描いています。

銀座のクラブのママというと聞こえはいいけど、じっさいのところは体裁をよくするために分不相応な家に住み、借金までして着物を仕立て、母と兄からは金を無心され、客たちは助けもしないのに都合のいいときだけ言い寄る。みんな寄ってたかって「女」であるママを食い散らかすのです。夫との死別という不幸は乗り越えたけれども、こんなにも惨めな思いをしてまで頑張る必要はあるんだろうか。ママのため息がザクザクと心に刺さります。誰だってこんな状況になったら生きるのがイヤになりますよ。「やってらんねえよ!」状態になるのもわかります。「ママ」である限りどこまでもついてくるお金や男の見栄、浮気の話。毎日毎日、職場に向かうために階段を上るあの数十秒間が、きっととてつもなく重く、長く、苦しいのでしょう。もしかしたら夫との幸せだった思い出がちらつくのかもしれません。

それでも階段を上るママは強いです。もうこれしか生きる道はないのだと悟っています。諦めとはちょっと違うかもしれません。吹っ切れ?でしょうか。それも違います。ぴったり当てはまる言葉ないけど、きっとママの決断は正しいのです。

主張はしないけど的確なカメラワーク、無駄のない編集、さらっと場の雰囲気に味わいをたす音楽。どれをとってもハイレベルでした。たくさんの悩みや不安で濁った心を丁寧にすくってくれる大傑作だったと思います。

余談ですが、これで30っていまの感覚だと若いし、仕事もプライベートもまだまだこれから充実してくる歳ですよね。だって新垣結衣とか長澤まさみあたりと同世代ですよ。半世紀前は人生が短かったんだなあと思います。