映画狂凡人

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「search / サーチ」感想:マウスポインタが演技する

こんにちは。じゅぺです。

今回は「search / サーチ」について。

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「search / サーチ」はネット上に残された痕跡を手がかりに、失踪した娘を探す父を描くサスペンスです。全編がPCとスマートフォンの画面で展開されるという点が公開前から大きな話題になっていましたね。その触れ込みで期待すると、少々作り込みが甘い部分もありましたが…非常に見応えのある作品でした。

まず、いちばんの注目ポイントである映像表現について見てみましょう。最初から最後まですべてPCとスマートフォンのディスプレイで物語が展開されます。すでに同じ製作陣で「アンフレンデッド」というホラー映画が作られているらしいのですが、僕は初めて見た表現なので、非常に斬新に感じました。本音と建前とか、怒りや戸惑いの気持ちを、タイピングのスピードや流れ、マウスポインタの動きだったり、ページを開く/閉じるで表現しているのが新鮮なのです。「マウスポインタの演技」なんて初めて見ましたよ。あと、冒頭の「アルバム」で追うひとつの家族の変遷は「カールじいさんと空飛ぶ家」のネクタイを結ぶ手元で夫婦の人生をダイジェストするあの名シーンを思い出しました。いまや大学生ぐらいの年ごろだと生まれてから現在に至るまで人生のすべてがデバイスに詰まっているんですよね。あれやこれやの出来事が走馬灯のように流れ、そのショッキングな終わり方も含めて、感傷的で見応えのある場面だったと思います。

さらに多くの人が指摘していたのが、言われたとおりにゴミを捨てない娘に怒り心頭の父が、FaceTimeに長文の説教メッセージを書き、逡巡したのち、すべて消去して優しいメッセージに書き直す場面。消す前が「本音」、書き直した後が「建前」であることが一目瞭然ですし、娘との距離の取り方に悩む父の葛藤がありありと伝わってきます。本来目に見えないはずの心の内側をいかに映像で(=目に見える形で)表現するのかは、映画における永遠のテーマです。このようにディスプレイを通して人の心を切り取るという手法は、その点でこれまでにない表現なのでないでしょうか。

ひたすらPCのディスプレイを見ていただけなのに、まさか人格も伝わってくるなんて、想像もつきませんでした。でも、考えてみれば当たり前ですよね。LINEの文体にしても、使っているスタンプにしても、一つひとつがその人の「話し方」ですから。そこに性格や考えもにじみ出るんですよね。そう考えると、全編スマホ画面の恋愛映画なんてのも面白いかもしれません。料理の仕方次第で可能性は無限に広がりそうです。

また、テキストを媒体としながらも、父と娘のコミュニケーション不全、娘を想う父の焦りや苛立ち、事件の顛末を消費する野次馬たちなど、人びとの複雑な心の動きが描かれており、ドラマそのものも面白かったです。表現の新奇さだけでなく、しっかり物語でも勝負しているんですね。いかに妻の死を乗り越え、娘との関係を修復にしていくのかという軸があるからこそ、飽きずに見られるんですよね。

正直、ディスプレイだけで表現するために不自然になってしまっているところや、そもそもディスプレイで描ききれているとは言い難い部分(テレビのニュース映像とか)はありました。しかし、これ以上ないんじゃないかと思えるあのラストカットや、冒頭の家族写真のシークエンスなど、強く印象に残る部分も多く、見てよかったと思える作品です。今後このジャンルがどんどん発展していったら楽しいですよねえ。特に短編だったらいくらでも選択肢がありそうですよ。僕はやっぱり恋愛映画で見て見たいですね。