映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

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「セーラー服と機関銃」感想:アイドルの処女性

こんにちは。じゅぺです。

今回は「セーラー服と機関銃」について。

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セーラー服と機関銃」は、薬師丸ひろ子主演のアイドル映画です。監督は80年代に傑作青春映画を数多く世に送り出した相米慎二。かねてから相米作品には興味があったので、まずキャッチーなところから手をつけようと思い、本作を選びました。

セーラー服と機関銃」は、父親の死をきっかけに主侠の世界に飛び込んだ女子高生の自立を描きます。最近の青春アイドル映画は、とにかく主演の女の子を可愛く綺麗に撮ろうという意図を強く感じますが、本作はわりとハードな設定ですよね。しかも、この映画は無垢だった少女が一足先に大人の世界を知り、やがて「処女」を喪失していくという筋立てです。もちろん多くの青春アイドル映画も少女の恋とその結実としての「キス」を描きますが、「セーラー服と機関銃」が違うのは、泉が佐久間という年上の男に好意を寄せるところでしょうか。おかげで、たとえば高校生同士の恋に比べると、よりエロティックで妖しい感じがします。女性アイドルの処女性を肯定・補強しつつも、最後にその壁を破壊してくるあたりに、単なるアイドル映画を超えた、切なく息苦しい青春映画としての普遍的な魅力を放っているのではないかと思います。

実験的な長回しとロングショットを多用する演出も「アイドル映画らしくない」ものだと言えます。正面から捉えるバイクの行列、機銃掃射のスローモーション、屋上で燃やされるドラム缶。どれも非常に強烈で、見どころのあるショットでした。必ずしも薬師丸ひろ子の良さをビジュアルで表現しようとせず、映画全体の流れや雰囲気の中に閉じ込めようとしているところに、相米監督のこだわりを感じます。まあ、もしかしたら演技経験のない薬師丸ひろ子の料理の仕方として、この方法しか選べなかった可能性もありますが。長回しの多用も溝口健二監督のような味わいがありましたね。

全体として振り返ったとき、好きな映画かというとそうでもないのですが、有名な作品だし、チェックして損はなかったなと思います。なにより前から気になっていた相米監督の作品ですから。これからも彼の作品を探していくつもりです。