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「オズランド 笑顔の魔法おしえます」感想:僕にとって個人的な映画

こんにちは。じゅぺです。

今回は「オズランド 笑顔の魔法おしえます」について。

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「オズランド 笑顔の魔法おしえます」は、地方遊園地に配属された新入社員・波平が、常に笑顔の上司・小塚の背中を見ながら成長していく様を描くお仕事映画です。あらすじとキャスト陣で作品のテーマからオチ、クオリティまでなんとなーく予想がついてしまいますが、この安心感が心地よいですね。ちゃんと期待通りのものをお届けしてくれます。ふて腐れていた波平の顔が徐々に凛々しくなっていくのはとっても素敵だし、一生懸命仕事に打ち込むグリーンランドのみんなが好きになる。良作です。

ちょっと個人的な話をさせてもらうと、僕自身まだ社会人1年目でして、波瑠演じる波平とは似たような境遇なんですよね。だから彼女の戸惑いや苛立ちというのは等身大の悩みとしてリアルに響いてきました。

波平は年上の彼氏が働く姿に憧れて、希望を胸にリゾート開発会社に入社します。ところが、配属は東京本社ではなく、田舎の遊園地。やりたいことはやらせてもらえなくて、やることは雑用ばかり。早稲田卒の自分のポテンシャルを買って呼んでくれたのかと思いきや、理由は単に「名前が面白いから」。学歴枠は同期の東大くんだよと。理想と現実のギャップや、腐らず貪欲に仕事を覚える同期と自分の能力を比較して、自信をすっかり失ってしまう。彼氏とも上手くいかない。どんどん不満が溜まってまわりにも生意気な態度を取ってしまう。あちゃ〜って思うけど、応援したくなります。さすがに波平みたいに先輩や上司に当たり散らしたりはしませんが、「これでいいのか?」「このままでうまくいくのか?」というモヤモヤは、僕の胸にも響くものがありました。で、僕と同じように悶々としている波平を見て、だいたいみんなそうなのかもな〜と思うと、すこし楽になりました。そして、だんだん「プロ」になっていく波平がとても愛おしく、元気をもらいました。自分もこうならなくてはって。恋愛映画にしろ、家族映画にしろ、誰かが自分と同じことで苦しんでいたり、怒っていたりする姿を見ると、自分の気持ちって間違ってなかったんだなと安心するんですよね。物語ってつくづく「自分」の鏡なのだと思います。

そういうキャラを演じる上で、白くて華奢は波瑠ははまり役でしたね。風が吹けば飛んでいきそうな細さと頼りなさが、慣れない環境で右往左往する新人の無力感や孤独に上手くマッチしていたと思います。

キャストの点でいうと、「魔法使い」の小塚を演じる西島秀俊もキュートでした。いつも笑顔で茶目っ気があって、職場のみんなに慕われているのも納得です。西島秀俊は影のある役が多いが、こういうキャラもいいよなと思います。元気いっぱいハイテンションな橋本愛もよかった。単なる騒がしい先輩で終わってしまった気がしなくもないので、もっと彼女の出番が見たかったなあとすら思いますね。

ただ、僕にとって極めて個人的な映画でありながら、「良作」という印象で留まってしまったのは、グリーンランドのロケーションが活かされていないと感じたからです。もともと撮影場所が普通の遊園地なせいもあるだろうけど、もっと魅力的に映して欲しかった。こういう映画は「ここに行きたい!」と思わせてくれないと。働いている人だけでなく、この場所も好きになれたら、もっと心に残っていたかもと思います。たとえば去年の同時期に公開されていた新垣結衣主演の「ミックス。」はロケーションの魅力に溢れていました。寂れた卓球教室や道路工事の現場の景色が、やはり映画を見終わった後も頭の中に残るんですよ。そういう郷愁すら感じるような輝きをグリーンランドにもたらすことができたら、これは(僕にとって)すごい映画になっていたんじゃないかなあと思います。好きなだけに、「惜しい!」と感じてしまう作品でした。でも、僕にとっては大切な映画です。