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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ヴェノム」感想:無職と宇宙人のロマンティックコメディ

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ヴェノム」について。

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「ヴェノム」はマーベルコミックの人気キャラクターで、スパイダーマンヴィランでおなじみのヴェノムを主人公に描く、ダークヒーロー映画です。大人の事情でスパイダーマンは出てきません。最初この作品の映画化を聞いたとき、スパイダーマンあってのヴェノムだと思っていたのに、単体でどうやって面白くするんだろうと不安だったのですが、これがなるほどと思わせるアプローチで、なかなか楽しかったです。

全体としては「雑だなあ」という印象です。良くも悪くも。とにかく話は転がり続けるし、エディとヴェノムの掛け合いは茶目っ気たっぷり。粘菌のように四方に張り付きながら戦うシンビオートの動きもカッコいい。バイクとシンビオートの連携抜群のカーチェイスも躍動感がありました。

言ってしまえば、見た後には特に何も残らないタイプの映画です。ハリウッドがいまみたいは優等生気質になる前の、もっと粗野で悪趣味な刺激を求めていた頃の「古き良き」作風に近い。だから細かい部分の整合性は作り手もあまり気にしていないと思うんですよね。だから、場面ごとは面白いけど、振り返ってみると、ちょっと首を傾げたくなるような描写もあります。特に、エディがヴェノムと出会うまでの過程が長く、その分、なぜヴェノムがエディのことを気に入っていくのか?の描写が薄くなってしまっています。たっぷりとエディのうだつの上がらない日常が描かれているから、ヴェノムが彼に惹かれていく理由の補完はできるのですが。あくまで見ている側の補完です。もう少しエディとヴェノムの交流をじっくり描いてくれたら、その後の二人の「イチャつき」っぷりも楽しめたと思うんですよねえ。
で、その「イチャつき」にも関わってくるのですが、「ヴェノム」は、ストーリーの面白さより「キャラ萌え」でドライブしていく映画だと思います。。MCUの楽しさを強化している印象です。エディのキャラクターは、曲がったことが許せなくて、頑固で、それでいて可愛らしさもあって。生きるのは下手そうだけど、憎めない。何やってもうまくいかないところにヴェノムがやってきて、良くも悪くも人生がガラリと変わる。自分なりの生き方を、ヴェノムと共に探っていく決心が固まるわけですね。主眼が事件の顛末ではないから、もっと見たいな〜と思います。トム・ハーディは酒飲んで酔っ払って愚痴ってるだけで面白いです。ずるい笑 いろいろな点に不満はあれど、見終わってみると「楽しかった」と感じられたから、いい映画だと思います。

ですが、この「楽しかった」という感想を抱いたことに関しては、正直なところ複雑な気持ちですね。第一弾の予告編が公開された段階では、得体の知れない生命体に寄生される恐怖を描くホラーとしての風合いが強く、僕もその方面で大いに期待していました。それが蓋を開けてみればコメディ、もはや夫婦漫才といってもいい。ロマンティックコメディでした。なんと言うべきか、「それでいいのか?」と思ってしまうんですよねえ。僕は同じ身体に宿る二つの自己の分裂と共生をもっとシリアスな視点から切り取ってほしかった。でも、コメディとしてはそこそこ楽しめたのです。一方で、このお話はヴェノムじゃないと成立しなかったのか?というと、正直微妙に違うのではないかと思います。

やはり見る前に期待値を高めすぎると、ガッカリしてしまうことはあります。誰が悪いというわけではないので、すごくモヤモヤが残るわけですが。「ヴェノム」は2作目の製作も決定しているそうです。これがもし三部作になるならば「帝国の逆襲」パターンで「ヴェノム」もよりダークでヘビーなテーマに踏み込むはずなので、そちらに期待することにしましょう笑