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「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」感想:分断を叫ぶカリスマに既視感

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」について。

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ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」は、大人気ファンタジーハリー・ポッター」シリーズの外伝第2作です。スキャマンダーと魔法動物の交流が中心だった前作に対し、グリンデルバルドの野望が動き出し、よりダークな作風になっています。また、ダンブルドア校長など「ハリー・ポッター」とのつながりを強く感じさせるキャラクターが登場し、一層「ハリー・ポッター」シリーズの世界観を深く楽しめる作品になっています。

しかし、どうでもいい話なのですが、僕は「ハリー・ポッター」シリーズにほとんど触れたことがありません。せいぜいテレビで放送していた「賢者の石」と「秘密の部屋」をみたことがある程度です。「黒い魔法使いの誕生」は、かなり情報量の多い作品で、山ほど固有名詞が登場します。しかも、それが「ハリー・ポッター」シリーズに出てくる設定と絡めたものになっているらしいんですよね。ハリポタ音痴の僕はダンブルドアぐらいしかわかりませんでした。「魔法使いの旅」と比べても格段に難易度が上がっていて、いきなりMCU作品並みのオタク濃度になっています。なので周りの盛り上がりについていけなかったのは個人的に辛いところだったりします笑

しかし、ここまで書いておいて意外かもしれませんが、僕は前作「魔法使いの旅」より本作「黒い魔法使いの誕生」の方が楽しめました。基本「敵側のターン」のお話なので、主人公のスキャマンダーやティナはグリンデルバルドに振り回されっぱなしなわけですが、僕にはこのなす術のない絶望感がツボでした。さらにクリーデンスやリタ、ナギニなど、様々なキャラクターの思惑が複雑に交錯し、予想外の方向にお話が転がっていくので、細かい設定などを抜きにしてもかなりハラハラしながら見ることができました。そして、ラストは丸投げ笑 このモヤモヤした気持ちも、この先どうなるんだろうという興奮も、全部続編まで宙吊りです。「スター・ウォーズ」旧三部作の第二作「帝国の逆襲」を思い出す構成ですね。シリーズものはやはり「帝国の逆襲」パターンからは逃げられないんでしょうか。「ジュラシック・ワールド炎の王国」や「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」もこの類でした。

最後に、グリンデルバルドについて。分断を叫ぶカリスマの姿には既視感を覚えました。90年前も今も人々の苦しみは変わりません。今回は第一次大戦後のパリが舞台ですが、その30年後にこの地はヒトラー率いるナチスの軍隊によって占領されます。そして、2017年には移民反対を掲げるルペンが大統領選で存在感を示しましたし、アメリカでは「壁」の建設政策や差別発言で混乱をもたらすトランプが最高権力者の地位にいます。この映画のうまいところは、グランダルバルドをただのウソつきとしては描いていないところです。ジェイコブとクイニーの悲恋を見せられているので、たしかにマグルも独立すべきかもなと思ってしまいそうになります。本当は、魔法使いとそうでない人で区切ってしまうルールが問題で、やはり分断を煽るグリンデルバルドは悪なのですが、心情的には納得しそうになるのが恐ろしいところ。90年前のお話を描くファンタジーでありながら、裏に隠されたテーマは非常に現代的なんですよね。第三作ではこの問題がどのように描かれるのか、そして、現実の世界はかつての失敗の歴史をなぞっていくのだろうか、いろんな意味で気になる作品です。