2018年の総まとめ:新作/旧作ベスト10の発表!
こんにちは。じゅぺです。
きょうは12月31日ということで年内最後の更新日です。1年の総まとめとして「2018年映画ベスト」を発表したいと思います!やっぱりこれを考えないと年が越せませんね。
今回は旧作洋画編/旧作邦画編/2018年新作編の3つに分けて考えました。それぞれ選考理由もつけて発表します。ちなみに数えていませんが旧作は200本以上、新作も100本前後は見たと思います。今年もなんだかんだたくさん見てしまいました。
それでは早速、旧作邦画編から。
旧作洋画編
1位「ブンミおじさんの森」
タイの死生観を反映させた作品です。非常に難解な作りになっていて、特にラストの描写には度肝を抜かれました。生と死、それから時間の概念をちょっとずつ端っこから崩したいって、最後はすべてを曖昧にしてしまうような、新しい体験がこの映画にはありました。映像と音楽も繊細かつ立体的で、家にいながら自分もブンミおじさんの森にいるかのような感覚に陥ります。オールタイムベストの1本です。
2位「踊らん哉」
フレッド・アステア&ジンジャー・ロジャースのペアの作品だったらダントツで一番だと思います。アステアの激しく、それでいて上品なステップにはうっとりしてしまうし、ロジャースの溌剌とした動きと、彼女を包むドレスの優雅な舞いは見るたびに美しいと思います。ダンスを披露するシチュエーションも、船の機関室やパーティー会場、スケート場に劇場の舞台と大変豪華です。何度も見返してる傑作です。
3位「ストレンジャー・ザン・パラダイス」
ジャームッシュ作品はいくつか見ましたが、これが一番好きです。つまらない日常が続くことに不感な男女3人をユーモラスに描きます。コミカルでありながら、長回しの場面になると独特のライブ感と緊張感を帯びてくるのも面白い。「退屈は永遠に続くんだぜ」と言いたげなラストも好きです。
4位「牯嶺街少年殺人事件」
思春期のトゲトゲクサクサした感覚を思い出させてくれる点で、まず青春映画として最高。そして映像表現の観点から見ても、一つひとつのショットが完璧に決まっていて、もはや芸術作品に昇華されています。4時間近くあっても退屈しない絵作りなんて、常人にはできませんね。本当にエドワード・ヤンは天才だと思います。
5位「ショート・ターム」
孤児たちと向き合う大人の葛藤や喜びが描かれています。子供たちの心の壁に触れることはとっても危険で体力のいる仕事だけど、そこを超えた時とっても素晴らしい景色が待っている。円環構造に鳥肌が立ちました。
6位「夏の遊び」
「夏の遊び」感想:生への執着と死への恐れを捨てる、青春時代の終わり - 映画狂凡人
詳細は記事にいろいろ書きましたが、いま思い返すと、若い力にあふれる作品だったと思います。トゥシューズのつま先立ちキスからのバレエのステージは、映像の美しさと主人公の生命力の強さが相まってすさまじい感動を呼びます。
7位「自転車泥棒」
戦後不況に生きる親子のお話。1から10まで目も当てられないぐらい悲惨な境遇のお話ですが、それでも彼らを突き放さず、ちょっぴり人生に希望を感じさせてくれるような目線で描くところに、この作品の優しさと生きることへの信頼を感じます。食堂に入ってもロクなもの食べさせてくれないシーンが切なくて好きです。チーズでしたっけ?美味しそうでした笑
8位「勝手にしやがれ」
男と女の不協和音を描きます。考えてみれば、最初からあの結末は必然だったとわかっていたと言えます。ストーリーの内容もいいのですが、ショットごとの完成度の高さに惹かれました。最後の二人で痴話喧嘩をする場面、ぐるぐると長回しで追いかけ回すところが特に最高でした。
9位「不思議惑星キン・ザ・ザ」
旧ソ連の異色SF。終始超絶ゆるいテンションで進みます。ひたすら笑いました。それでいて当時の国際情勢を反映させた「平和への願い」も練りこまれていて、その切実なメッセージに感動しました。
10位「藍色夏恋」
自分もこの頃の台湾で青春してみたかったと思にました。淡く切ない恋心と複雑な友情を胸に自転車で町を駆け回るモンちゃんが爽やかです。劇場で見たのですが、正解だったと思います。
続いて旧作邦画編です。
旧作邦画編
1位「ハッピーアワー」
「ハッピーアワー」感想:神戸の海が暗示する4人の未来 - 映画狂凡人
とにかく衝撃を受けました。オールタイムベストの一本です。5時間17分を贅沢に過ごしました。有機的な人間関係の変化を、ここまでじっくりと描き切るのは、もはや変態だと思います。映画と演技の概念も覆されました。
2位「台風クラブ」
中学生の幼稚性や暴力性、性/生への目覚めを生々しく描きます。外連味溢れるオープニングから引き込まれ、衝撃のラストには放心状態になりました。相米監督らしい独特の長回しが、台風を待ちわびる少年たちの興奮や熱気を生々しく伝えます。詳細レビュー記事は後日公開予定です。
3位「洲崎パラダイス 赤信号」
男と女の関係の不条理さを描きます。なんとなくテーマ的には「勝手にしやがれ」に近いかもしれませんね。側から見ればバカらしいけど、本人たちは至って真剣で必死に生きているのです。「境界」の描写が多様で好きでした。こちらも後日レビュー掲載予定です。
4位「夜は短し歩けよ乙女」
アニメーションが最高です。動きを見る喜びがこの映画にはあると思います。大学生の1年と四季の変化を一晩の出来事で語り切っていて、たしかに大学生活すぐ終わっちゃったな〜と思いました。今年公開される湯浅監督の新作も楽しみです。
5位「仁義なき戦い」
例のテーマ曲が流れるだけで血が沸騰するぐらい興奮します。人が死ぬ瞬間にワクワクできる映画は素晴らしいですね、やっぱり。ヤクザ映画は敬遠していたのですが、この映画をきっかけに良さに気づきました。ちなみにこちらも後日詳細レビュー掲載予定です(全然更新間に合ってませんね…)。
6位「女が階段を上る時」
「女が階段を上る時」感想:ママは階段を上る時なにを思うか - 映画狂凡人
ママさんの気持ちの揺れにミリ単位で共感できます。成瀬巳喜男の作品は本当に繊細で、どうしてここまで細かくリアルに人を描けるのだろうかと、毎回感心してしまいます。また、女性の悩みはこの頃から変わっていないらしいですねこの映画が先進的なのか、日本が古いままなのか。考えてしまいます。
7位「秋刀魚の味」
小津安二郎は「東京物語」の良さがわからず放置気味だったのですが、この映画ですばらしさに気づきました。「女が階段を上る時」は女の生きづらさを描いていましたが、「秋刀魚の味」は男の不幸も描いています。悲しさを戦争の歌で紛らわす様が切ないです。
8位「男はつらいよ 奮闘編」
マドンナが軽度の知的障害を背負っているという、シリーズでも異色の内容になっています。そして僕の中では今の所ぶっちぎりで好きな作品です。寅さんはいつでもはぐれ者の味方なんですねえ。寅さんが笑いながら言う「死ぬわけねえよな!」に泣きました。
9位「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」
「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」:夭折の天才の大傑作 - 映画狂凡人
戦争で夭折した天才・山中貞雄の作品です。いわゆる人情モノなのですが、今時はやりの「疑似家族」モノにもカテゴライズできる内容です。本当は優しいのに素直じゃない左膳が可愛いのです。
10位「マイマイ新子と千年の魔法」
「この世界の片隅に」の片渕須直監督の作品です。心に傷を負った少女と空想の世界のシンクロに感動します。いかに別れの悲しみと向き合うかは永遠のテーマですが、子どもらしい目線から純粋な答えを導き出しています。
そしてついに2018年新作編です!悩みに悩んだ結果、このランキングにしました。ちなみにツイッターで発表したベスト10に抜け落ちていた作品があったので、少し修正を加えています。
2018年新作編
1位「きみの鳥はうたえる」
https://eigakyorozin.hatenadiary.jp/entry/2018/09/11/090000
今年のベスト映画は「きみの鳥はうたえる」です!これは言葉では説明できない体験でした。徹夜明けのまどろみの中に浸かるような心地よさが、全 3人の関係を貫いています。終わりを自覚していないのが「青春」なのだと気付かされます。ラストカットには鳥肌が立ちました。
2位「若おかみは小学生!」
https://eigakyorozin.hatenadiary.jp/entry/2018/10/02/120059
こちらは映画ファンの間でも非常に話題になっていましたね。僕も特集上映を含めて4回も見てしまいました。ひたむきに頑張り続けるおっこちゃんの姿に感動すると同時に、病的なまでに作り込まれた映像美に驚かされます。はやくソフトを買いたいです笑
3位「ROMA/ローマ」
「ROMA/ローマ」感想:極上の映像詩でつづる人生賛歌 - 映画狂凡人
昨日ご紹介した「ROMA/ローマ」も3位に入れました。映像的快楽を極限まで刺激される作品です。繰り返される「母」のイメージに、キュアロン監督が作品に込めた強い想いを感じます。劇場公開されたらもう一度見たいですね。
マーベル・シネマティック・ユニバース最大の問題作です。まさかのアベンジャーズ敗北、どころか世界の人口の半分が消滅というめちゃくちゃ過ぎるエンディングに(どうせこの後みんな復活するとわかっているのに)ショックを受けました。劇場が明るくなった後の観客の呆然とした顔をいまでも覚えています。
5位「レディ・バード」
一人の少女が「痛い」時期を終えるまでを描きます。誰もが思い出したくないあの頃の記憶をえぐられるはずです。一方で「レディ・バード」を見ながらクリスティンに抱く愛情は、そのまま過去の自分の肯定に繋がるのだと思います。グレタ・ガーウィグ監督の見る世界をもっと知りたいと思いました。
6位「アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダル」
トーニャ・ハーディングの波乱の半生を描きます。最近は伝記映画が流行りですが、この作品はあえて「主観的」な語り口を取っています。語り手をあえてスキャンダルの中心であるトーニャに託すことによって、「他人の人生を面白おかしく見せること=スキャンダル=物語」の構造を壊していく姿勢が面白かったです。
7位「スリー・ビルボード」
鑑賞直後は年内ベスト間違いなし!と思っていたのですが、2回目に見たら少し微妙に感じてしまいました。しかし、予想を裏切る展開の数々と、物事の二面性をひたすら皮肉に描き続けるマーティン・愛ドナーの脚本のレベルの高さには唸りました。あの開かれたラストはやはりことし屈指のエンディングだと思います。
8位「ワンダー 君は太陽」
生まれつき顔に障害を負ったワンダーくんと彼を愛する周りの人びとを描くヒューマンドラマです。単なる御涙頂戴かと思って挑み、見事に予想を裏切られました。ワンダーくん以外の目線でもドラマが進む形式になっていて、家族を愛するがゆえに「手のかからない子」になろうと親に甘えるのを我慢してしまう姉・ヴィアのエピソードはグッときました。みんなそれぞれに悩みや苦しみを抱えているんですよね。
9位「エンジェル 見えない恋人」
「エンジェル、見えない恋人」感想:五感を刺激する官能的な映像美 - 映画狂凡人
姿の見えない少年と盲目の少女の恋愛を描くベルギー映画です。官能的な映像美が優れており、お互いの「欠点」を補い、愛し合うというワンアイデアを豊かなイマジネーションで広げているのに唸りました。エンジェルたちと同じように五感で感じ取ることを求められる作品だと思います。
10位「響 -HIBIKI-」
「響 -HIBIKI-」感想:自分の「限界」を知ること - 映画狂凡人
こちらは欅坂46のセンター・平手友梨奈の初主演作。普通のアイドル映画だと思うなかれ。結構スリリングな青春映画になっています。こちらも期待を超えてきた作品ということで入れました。実は主演の平手友梨奈よりも彼女の親友であり、才能に嫉妬するライバルを演じるアヤカ・ウィルソンの存在感が大きい作品でもありました。
以上、2018年の映画ベスト10でした。こうやって並べて見ると、自分の趣味が全部バラされているようで少し恥ずかしくもあります笑 来年はこれらを超えるもっと素晴らしい作品に出会いたいですね。来年もよろしくお願いします!良いお年を〜。