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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アメリカの夜」感想:映画がなければ生きられない人たち

あけましておめでとうございます。じゅぺです。

今年もよろしくお願いします!

新年1本目の記事は「アメリカの夜」の感想です。

いきなりですが、去年のお話から始めます。2018年の映画界も大いに盛り上がりましたが、中でも象徴的な作品に「カメラを止めるな!」がありましたね。本ブログでも公開当時紹介しました。

以下、「カメラを止めるな!」のネタバレも含みますので、未見の方はご注意ください。

「カメラを止めるな!」感想:文化祭的高揚感を共有する最高の劇場体験 - 映画狂凡人

カメラを止めるな!」は、テレビドラマのオモテとウラを描く二重構造の作品になっています。前半でドラマの本編を一気に紹介し、後半はそのウラで起こっていた撮影のドタバタを面白おかしく描く種明かしパートになっているのです。僕も映画館でたくさん笑いました。謎をたくさんばらまいておいて最後にぜんぶ回収してしまう構成も秀逸でとっても気持ちがいいですよね。

で、今回レビューする映画は「カメラを止めるな!」の後半パートに多大な影響を与えたであろう傑作「アメリカの夜」です。

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アメリカの夜」は、映画の撮影現場で起こるトラブルの数々を描くコメディ映画です。セリフを覚えられない女優、言うことを聞かない猫、色恋沙汰の絶えない役者陣…あまりにも曲者ぞろいでカオスな空間に思わず笑ってしまいます。監督役を本作の監督であるトリュフォー本人が演じているところも可笑しいです。あまりに情けなく振り回される監督の姿に、きっとトリュフォーも嫌なことがまくさんあったんだろうなと邪推してしまいます。

しかし、この「アメリカの夜」が映画への恨みつらみにまみれた作品かというと、そうではありません。むしろそこにあるのは映画への愛です。いたるところに映画が大好きなんだという気持ちが溢れていて、なんでもないシーンでも思わず涙が出そうになります。

おそらく、この映画に出てくる人びとはみんな映画がないと生きていけない人たちなのかもしれません。たくさんの人が集まって、なんとか決められた予算と納期の中で作品を完成させて、プロジェクトが終わればみんなバラバラになる。彼らの身体がそういうリズムに合わせてできている気がするのです。監督は現場の責任者としてトラブルのたびに振り回され、スケジュールが遅延すれば悪夢にうなされ、酷い目にばかり。役者たちも、今回はいったいどういう現場なのだろうと不安いっぱいの状態で顔合わせをし、やっとその空気に慣れた頃にクランクアップ。すごく大変だろうと思います。

けど、それでも頑張れるのはやっぱり映画が好きだから。そんな気持ちが伝わってきます。白眉はクライマックスの大集結の場面。スタッフの失踪や主要キャストの事故死を乗り越え、ラストカットを撮り終えた瞬間の達成感と解放感。いろいろあったけど、なんとかスケジュール通りに終えられてよかったねって。「カメラを止めるな!」もこれをやりたかったのだなと思いました。文化祭の打ち上げのような賑やかさと多幸感に包まれたまま、この映画は幕を閉じます。

最後まで残るのは「やっぱり映画って最高だ」という気持ちです。僕も「映画がなければ生きられない人たち」の一人なのだと思います。2019年もたくさん素晴らしい映画に出会って、しあわせな1年にしたいところです。今年もよろしくお願いします!