映画狂凡人

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「台風クラブ」感想:思春期の幼稚性と暴力性

こんにちは。じゅぺです。

今回は「台風クラブ」について。

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台風クラブ」は、相米慎二監督による青春映画です。台風の接近を機に内なる衝動を解放していく中学生たちを描きます。相米監督の作品は「セーラー服と機関銃」を見て以来気になっていて、本作も楽しみにしていた作品です。近所のツタヤになかったのでiTunesでレンタルしました。おうちにいながら名作を見られるって、便利ですねえ。

で、話を戻しますが、僕的に青春映画のオールタイムベストに数えていい作品です。たいへん素晴らしかった。なにがすごいって、思春期の青少年の病理や、心身のアンバランスさゆえの気持ち悪さが、センセーショナルに、かつリアルに描かれているからです。

血や火傷、裸体など生と死のイメージを刺激する映像の数々は、子どもと大人の間であるがゆえの幼稚性と暴力性を象徴しています。プールでの窒息も、クラスメイトのイタズラで負ってしまう火傷も、窓から飛び降りた三上の体が地面に叩きつけられる音も、とてもリアルに痛みを感じます。「ファイト・クラブ」じゃないですけど、痛みによって実感する生もあることでしょう。体の成長に内面が追いつかないもどかしさや、溜め込んでいた性欲は、台風によってかき乱され、自傷行為にも近い狂乱が、少年たちの生に実体を与えるのです。

この映画は、台風通過の翌日に向けてすべてが収束していく作りになっています。その過程で、数学の先生が恋人との問題を教室に持ち込んでしまったり、台風で帰れなくなってしまった生徒たちが雨の中全裸で踊り狂ったり、家出して東京まで行ってしまう女の子がいたりと、さまざまな事件が起こります。

これらの出来事が密接に絡み合って最後に起こるのが、三上の自殺です。彼の死の翌朝、嵐が過ぎて泥だらけになった校庭に突き刺さる彼の死体を写して、この映画は終わります。非常に衝撃的なラストでした。やはり見終わったあとはなぜ彼が死ななければならなかったのか?を考えてしまいます。そこで僕が思うのは、三上という少年は、子どもと大人のあいだに挟まったまま身動きが取れなくなってしまった存在なのではないか、ということです。成長してきたがために将来の人生を意識してしまうけど、かといって大人のようにちょうどいいところで諦めることもできない。ただ未来への漠然とした不安と恐怖に蝕まれていった結果が「生の一部としての死」という悟りであり、自死だったのです。

そうした思春期の内面世界を表現する演出も卓越していました。「暗闇でダンス」のオープニングから普通の青春映画とは違う騒々しさと、少なからぬ不穏さを感じます。そして、独特の間合いを閉じ込めた長回しが、会話の生っぽさと思春期の男女の不安定な姿を強調していきます。さらに、衝撃的なクライマックスを暗示するかのよくに、三上は常に画面の中央でぽつりと寂しげに佇んでいるのです。まるで誰も理解者がいないかのように。一つひとつの構図もキマっていて、非常に快感でした。

ところで、さすがに飛び降り自殺というのは物語的な誇張ですが、三上の絶望は肌感覚で伝わってくるものがあります。というのは、この年頃の僕も、死ぬことや老いることを考えては、意味なく怯えていたからです。これって三上くんの問題と同根な気がします。いま振り返るとなぜああいう精神状態になっていたのかはっきり思い出せませんが、自分という人間の輪郭がはっきりしてきたことへの戸惑いや動揺が、心を不安定にさせるのかもしれません。

いまはDVDしか出ていませんが、そのうちブルーレイでも出たら手元に置いておきたいなあと思う作品です。大傑作でした。