映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ペット」感想:動物目線で世界を切り取る

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ペット」について。

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「ペット」はニューヨークのアパートで暮らすペットたちの大冒険を描くアニメーション映画です。制作スタジオは「怪盗グルー」シリーズでおなじみのイルミネーション・スタジオ。フランスらしいエスプリの効いたブラックな笑いと、都会的でポップな空気感がとってもキュートな作品です。

人間たちの見ていないところでなにが起こっているのかというテーマは「トイ・ストーリー」的です。「トイ・ストーリー」ならオモチャ目線であったように、「ペット」なら動物目線で人間の世界をとらえ、そのおかしさと愛おしさを教えてくれます。違う視点から世界を切り取り直し、再構築していく試みは、メインターゲットである子どもだけでなく、大人でもワクワクさせられます。マンハッタンの摩天楼をアスレチックのように駆け回るシークエンスが特に楽しかったですね。高低差と奥行きを意識した画面の動き、アニメならではの長回しも最高でした。デフォルメの効いた(そして時に悪意も感じる笑)キャラクターたちも可愛らしく、一見特徴はないんだけど、ぬいぐるみに欲しくなるような親しみやすさがあります。なんかこう、ぎゅーっと抱きしめたくなりますね。

しかし、この映画の本当の面白さは円環構造にあると思います。無数にきらめく家々の窓の明かりに、それぞれの「いってきます」と「ただいま」の物語があるのです。平和で愉快な日常の1ページをめくる楽しさ。映画を見終わって、現実に戻ったとき、少しだけ景色が明るく見えてきます。

「帰る場所がある」ってなんて素晴らしいことなんだろうと思わされました。人間のパートナーとして、世界一の大都市に暮らす住民の一人(?)として、彼らは生きているのです。最初から最後までマックスとデューク、それから彼らを追いかけるキャラたちが貫くのは「元の場所に戻りたい」という想いであり、ほとんど登場しないにもかかわらず、つねに意識されるのは「家」の景色と「ご主人様の顔」なんですね。見る人それぞれがマックスやデュークに自分を当てはめて大切な誰かを想ってみたり、家で待ってくれている家族の姿を想像してみたり。帰るべきは「家」であり、淀みなく流れていく平穏な毎日なのだと、しんみりした気分になりました。

これは映画館で観るべき作品だったなあって、悔しくなりました。映画館という外界から区切られたハコから「日常」へと帰っていく。さあおうち帰ってなにしようって。そういう体験は家のテレビで見ても得られないですから。つくづく映画って映画館で見るべきものだなあと思います。