映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「復讐は俺に任せろ」感想:真相に手の届かない歯がゆさ

こんにちは。じゅぺです。

今回はフリッツ・ラングのサスペンス「復讐は俺に任せろ」について。

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フリッツ・ラング」というビッグネームに好奇心をくすぐられて手をつけたのですが、ぶっちゃかそこまで好きにはなれない作品でした。良くも悪くもこの頃のハリウッド映画かな〜という気がします。

復讐は俺に任せろ」は、主人公の刑事・バニオンが、警察内部まで侵食するマフィアの陰謀と戦う…というお話。どこまで探りの手を入れても、逃げ水のように遠くに「真相」が離れていってしまう構図は「死刑執行人もまた死す」(後日レビュー予定)に似ているかもしれません。すぐ目の前に敵がいるのに手が届かないのが歯がゆいです。

昔の映画を見て時々思うのは、よくここまでシンプルに撮れるものだということです。2019年に同じ話を撮れば120分はかかりそうな内容を89分でまとめてしまうのです。事件の導入部からムダがなく、するすると話が進みます。最近の映画のお作法に慣れていると、少々タメが足りないと感じるかもしれません。ラストのデイヴが警察に復職する描写なんてホントにアッサリしてます。じっくりたっぷり間を持たせて見せるような演出よりも、要所ごとにしっかり情報を出して、バランスよくまとめている印象を受けますね。

おかげで一つひとつの描写やシーンのイメージが鑑賞後も強く残ると思うのです。本作で言えば、無残に傷つけられていく女性たち、特に顔が半分焼けたデビーが印象的でした。本作の芯にはまちがいなく警察を辞めさせられたデイヴ、都合の悪い事実を知っていたために消されたルーシー、疑惑のために美しい顔を傷つけられたデビーなど、事件に巻き込まれて人生を狂わされたふつうの人々の無念や怒りだと思います。非力な市民が権力に握りつぶされていく絶望は、いつの世も変わらないのですね。このあと何回も見るぞ!と思えるほど気に入りませんでしたが、僕的にはこのテーマとても好きです。そろそろドイツ時代のフリッツ・ラングも見たいところです。