映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「アクアマン」感想:みんなの「好き」を詰め込んだ竜宮城

こんにちは。じゅぺです。

今回はDCFU最新作「アクアマン」の感想です!

f:id:StarSpangledMan:20190211101145j:image

「アクアマン」は「マン・オブ・スティール」から始まるDCユニバース5作目の作品です。「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」でサプライズ出演し「ジャスティス・リーグ」で本格的な登場を果たしたアクアマンが主人公の本作。粗野で陽気な「半端者」のアーサー、が陸と海の架け橋になるまでを描きます。DCユニバースは「バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生」が不動の1位だと固く信じている僕ですが、「アクアマン」はそれに続く素晴らしさでした。ひさびさに映画館で純粋な驚きにあふれる作品に出会えた気がします。もうとにかくアトランティスの世界観とキメキメのアクションが楽しすぎます。戯画調のザック風の決め絵とジェームズ・ワン長回しを組み合わせ、見たことのないノンストップアクションに昇華しているのです。本国アメリカで「ダークナイト」を抜いてDC映画史上最高の興行収入を記録しているのも納得です。以下、それぞれツボだった点に触れていきましょう。

 

みんなの「好き」を詰め込んだ竜宮城

ワイルド・スピード SKY MISSION」の世界的な最高でハリウッド指折りのヒットメーカーに名乗りを上げたジェームズ・ワン。彼はとにかくお客さんを喜ばせる方法がわかっている人なんですよね。「アクアマン」ではどっかの大人気シリーズを思わせるエッセンスが多数登場していました。たとえば「ワイルド・スピード」を彷彿とさせるクラブミュージック的なノリの良さ。海から現れてビーチを闊歩するジェイソン・モモアアンバー・ハードの並びは、完全にヴィン・ディーゼルミシェル・ロドリゲスですよね。しかも海中では特になかったのに、突然地上に出てからこういう演出をやりだすのだから笑えます。ワン監督もどっかに入れておきたかったのでしょう。

そのほかにもシチリアの遺跡と石造りの市街地を天井伝いに駆けまわるアクションは「ミッション:インポッシブル」のようなスパイ逃走劇の面白さがありましたし、愛憎入り混じった宮廷闘争劇はさながら「マイティ・ソー」です。アーサーの複雑な兄弟関係はソーとロキを思い出させます。美しい海中の描写は「ファインディング・ニモ」を想起させますし、タコが太鼓叩いたり海洋生物がお祭り騒ぎをする様は「リトル・マーメイド」みたいでした(ちょっとこじつけ?)

 

ザック的神話アクションの到達点

とにかくみんなが大好きな要素をでっかい鍋に放り込んだ上に、DCお得意のザック的神話アクションでまとめてしまうのが「アクアマン」の凄さです。

f:id:StarSpangledMan:20190213195237j:image

特にクライマックスのアーサーとオームの一騎打ちの場面!カラバッジョの宗教画のようなライティングを駆使した映像美には思わず息を呑みました。あまりの仰々しさに笑いが漏れてしまうほど。オームの攻撃を受けるたびにバチバチの決めポーズで静止するアーサーには拍手を送りたくなりました。超人たちの戦いは人智を越え、信仰の対象にすらなっています。神々の戦いです。しかもジェームズ・わん監督がすごいのは、ザックが作り上げたDC作品のお家芸にただ乗っかるだけでなく、アクションを長回しでシームレスにつなぐお得意の技でそれをパワーアップさせているところです。ザック演出の美点を残しつつ、口当たりのいいエンタメに仕上げたワン監督と彼のビジョンを現実にしたプロの技にひたすら脱帽です!

 

主人公を好きになるということ

「モモアマン」とネタにされている通り、主演のジェイソン・モモアに合わせてアクアマンのキャラクターは多くの点で原作から手を加えられています。おかげで俳優本人のキャラクターをなぞるように、強面だけど優しい心を持つチャーミングなヒーローとして、アメコミ映画史に名を残す人気キャラクターの階段を一気に駆け上がったのです。もちろんジェイソン・モモアの好演のおかげなのですが、やはり彼の傍を固めるキャラクターたちの魅力とそれを支えるシンプルなストーリーと語り口にこそ成功の理由があると思います。

たとえば、アクアマンの相棒、いやときに先導役として大活躍を見せるメラ。セクシーな容貌が目を引きがちですが、誰よりもパワフルかつアトランティスの未来を考える勇敢な王女として物語を強力にドライブする存在です。シチリアの景色に感動して人間界への認識を改める柔軟さも素敵ですし、ツンツンしながらもアーサーに惹かれていくところも可愛い(ちょっとベタすぎやしないかとも思いますが笑)。バラをムシャムシャ食べるのもお茶目です。「アクアマン」の憎いところは、これが箸休め的なギャグになっているだけでなく、冒頭で紹介されるアーサーの父とアトランナの出会いの思い出(目が覚めてすぐそばにあった水槽の金魚を食べてしまう)とリンクしているところです。きっとアーサーもこのとき父から繰り返し聞かされてきた母の姿と重ねたのでしょう。あえて突っ込まず、一緒になって嬉しそうにバラを口に放りこみます。アーサーの優しさとカリー家の家族愛を象徴する名場面です。あとちょっぴり「ローマの休日」っぽいところもロマンチックですね。

ほかのキャラクターも振り返ってみましょう。カリスマ的な美と凛々しさで演技の幅を見せつけたニコール・キッドマンも素晴らしかったし、渋い脇役に徹するドルフ・ラングレンもカッコよかった。彼は歳をとって顔がシワだらけになってからの方がイケてる気がします。悪役っぽい顔をしておいて最後までしっかりアトランナの忠実な下僕だったバンコ。彼を演じるウィレム・デフォーも知的な雰囲気を抜群に生かし、それほど登場時間が長くないながらも存在感がありました。

そしてなによりメインヴィランを演じたパトリック・ウィルソン!オーシャンマスターの座を狙ってアトランティスを混乱に陥れるオームですが、美しい海と民たちを守りたいという想いゆえの暴走なのが切ないです。ある意味で純粋かつ高潔な心を持つ人物でもあると思います。これも悪役としては少々ベタであるけど、パトリック・ウィルソンの演技によってちゃんと血の通った人間になっています。あの整った顔立ちと邪悪な目つきが最高です。ジェイソン・モモアの破天荒なアウトロー感と良い対比になっていて、しっかりヒーローの引き立て役の仕事を果たしていると思います。

 

終わりに

振り返ってみると、かなりてんこ盛りな内容ながら、度肝を抜く海中の大戦争シーンあり、陸上でもアクロバティックな逃走劇あり、愛憎入り混じった家族ドラマあり、そして最後にちょっぴりロマンスありと、かなりバランスのとれた作品でした。「ジャスティス・リーグ」で大きくズッコケたDCシリーズですが、「アクアマン」で持ち直した印象です。「シャザム!」もたのしみですね。