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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「県警対組織暴力」感想:組織に生きる男たちの戦い

こんにちは。じゅぺです。

今回は「県警対組織暴力」について。

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県警対組織暴力」は、警察官でありながら暴落団組長の広谷との関係を深めていく久能を主人公に、組織の腐敗と権力闘争を描く実録ヤクザ映画です。主演は、菅原文太松方弘樹。いつもの二人です。

この映画の見どころは、ありきたりな言葉では言い表せない久能と広谷の不思議な関係性ではないでしょうか。組織への忠誠が求められる世界でら本来交わるはずのない二人が互いを認め合う。友情でも仲間意識でもない。あくまで利害が合致しているだけ。しかし、地獄だろうと天国だろうと二人は同じ道を行くのです。強いていうなら、「同志」とか「兄弟」が当てはまるのでしょうか。距離の取り方が絶妙で、もどかしくもなりますが、しかし、これ以外の関わり方も考えられません。敵対する組織に属しながら、しかるべきタイミングにしかるべき形でハマってしまったのです。警察もヤクザも関係ない、全く異なる環境で出会っていたら、二人は親友になっていたかもしれませんね。

この映画の目線もまた久能と広谷のように、主人公である二人とは適当な距離感を保っています。警察とヤクザの癒着、警察内部の摩擦など、過度に当事者に寄り添うことはありません。実録物なのであくまで少し離れた距離から男たちの生き様をスケッチしています。海田が現れてしまった段階で、二人の運命は決まっていたのだということを、余計なエモーションを排除して、ただ冷徹に見つめています。コッテリした世界観ながらも臭みを感じさせないのは、こういった高度な演出姿勢あればこそなのではないでしょうか。

東映ヤクザ映画を何本か見て思ったのですが、どれも描かれているのは組織に縛られているがゆえの悲哀なんですよね。先日レビューした「実録外伝 大阪電撃作戦」も同様です。久能ほどではないにせよ、組織の論理に振り回される経験を、生きていれば大なり小なりするのではないかと思っています。ヤクザという荒々しい世界を舞台にしながら、彼らの苦悩が僕たちに響いてくるのは、そういうところで現実とスクリーンの向こう側が地続きになっているからではないかと、思わずにはいられないのです。