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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「けんかえれじい」感想:青年の暴力性に潜む戦争の熱気

こんにちは。じゅぺです。

先日、元フジテレビアナウンサーでバラエティ番組にも引っ張りだこの高橋真麻が一般人の男性と結婚したそうです。おめでたいニュースですね。そんな彼女のお父さんは俳優の高橋英樹。長い間一線で活躍してきたベテランです。今回はその高橋英樹の主演映画「けんかえれじい」について。

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けんかえれじい」は、ケンカに明け暮れるバンカラ中学生の青春を描く鈴木清順監督の作品です。破天荒で楽しいアクション大作に仕上がっており、気軽に見られるエンタテイメントになっています。

鈴木清順監督の作品は「東京流れ者」を見たっきりですが、一つひとつのショットにパンチがありますね。桜散る夜道で手をつなぐキロクと道子や、二人が障子越しに手を重ねる場面など、初々しく切ないシチュエーションがすばらしい。思わず鳥肌が立ちました。本当に映像を見る喜びと驚きにあふれていると思います。また、芸術的な楽しさにとどまらず、単に見ていて笑える場面も多いです。道子のピアノをアレで弾いて楽しそうにするキロクには爆笑しました。裸足で画鋲の上を歩いたり、肥溜めに落とされたり、彼の野蛮さが印象に残りますね。

また、物腰柔らかな青年が、学校の規律や信仰に従って道子への気持ちを抑え、ゴロツキの世界に入り込む中で、その暴力性を解放していく様は、軍国主義の波にのまれて破滅していく日本のその後を暗示しているかのようです。キロクが喫茶店で出会った男が北一輝だと判明する衝撃のラストによって、この映画は突如政治的な香りを漂わせてきます。僕は最後にすべて合点がいきました。彼の身体に徐々に帯びてくるあのおっかなさが、戦争の熱狂へと繋がっていくんだなと。味つけは軽やかながら塩分と油はたっぷり!みたいな映画でした。