「翔んで埼玉」感想:予想外のヒットの土壌
こんにちは。じゅぺです。
今回は話題沸騰のコメディ映画「跳んで埼玉」の感想です!
「翔んで埼玉」は、魔夜峰央による同名漫画をGACKTと二階堂ふみの主演で実写化したコメディ映画です。もともと原作の漫画は1982年の刊行だそうで、最近になって復刻版をリリースしたところ人気が再燃、映画化にまで至ったということです。詳しい経緯は知りませんが、この漫画をチョイスした出版社は相当センスがいいですね。
振り切った茶番劇
「翔んで埼玉」は、都民による迫害に苦しみ、身を潜めて暮らしていた埼玉県民たちが、アメリカ帰りの高校生・麻美麗に率いられて大規模な反乱を起こす…というお話。読めばわかる通り、とことん開き直った茶番劇になっております。冒頭に「あんまり真面目にみないでね」みたいな作者コメントも出てきます。カラオケ館のコスプレレベルの衣装、ノリだけで押し通す大仰な演技、そして明らかに江戸時代の百姓以下の生活をしている埼玉の描写。東京も東京に見せる気ゼロで、群馬の寂れた遊園地を「青山」と言い張る始末です。極限までリアリティラインを下げて、下げて下げて下げまくって、その上でご当地ネタをぶっこんでくる。テキトーに見えて結構計算された構成になってるんですね。
「翔んで埼玉」ヒットの土壌
本作は基本的に人はイジらず、名物ネタを中心に構成しています。トゲのあるネタを期待すると拍子抜けかもしれませんが、家族や友だちと見るにはちょうどいい温度感かなと思います。地元自慢プロレスの趣きなんですよねマニアックになり過ぎず、やっぱり地元っていいよね、好きだよねって語り合いながら劇場を後にできるバランス感覚です。ちょうどいい具合に郷土愛をくすぐってくれます。埼玉県で満席続出の大ヒットを記録したのも納得です。
ご当地自慢というのは昔からありますが、さいきんは「秘密のケンミンショー」や「月曜から夜ふかし」のような番組が話題になったり、群馬ネタや「ちばらぎ」がある種のネットミームとして市民権を獲得するなど、この手のネタが「あるある」や「いつもの」笑いとしてシェアしやすい環境が醸成されているのではないでしょうか。この流れの中に「翔んで埼玉」のヒットは位置付けられると思います。
ところで、よく考えると、この類の笑いは「2ちゃんねる」や「ニコニコ動画」に源流がある気がします。かつてはアングラ扱いされてましたし、ツイッターやYouTube、TikTokに若年層は流れていまや「昔のもの」になってしまっている両サービスですが、その文化は大衆化してリアルの世界に広がっていると言えるでしょう。なにげない映画の描写にネットの歴史を感じて感慨にふけってしまいました。
「あるある」ネタの弊害
ただ、ネットの動物動画を集めて芸人に見せてリアクションさせるバラエティ番組的なノリがなくはなにです。「あるある」中心であることは、反面「知ってる」ネタの詰め合わせでもあるということ。人によってはぬるいと感じるかもしれません。僕ももっとパンチ効いててもいいのにとは思いました。さすがにご当地ネタだけで100分持たせるのは厳しかったかな。とはいえ、劇場の温かい空気の中で見るのがベストでしょう。この映画はやはり地元愛をたしかめるものであってほしいし、洒落た皮肉も求めてないので、これが正解だと思います。関東人以外の感想も気になるところです。