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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ニンジャバットマン」感想:「バットマン」の解釈に違和感

こんにちは。じゅぺです。

今回はファンの間でも賛否両論だった「ニンジャバットマン」について。

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ニンジャバットマン」はDCコミックスの大人気キャラクター・バットマンを日本のアニメーション会社が戦国時代風にアレンジした作品です。もはや企画の存在からして謎で、まぎれもない珍作と言えるでしょう。作り手もいかに「見たことのないバットマン」を生み出そうかというところで苦心していたと思います。なのであまり大真面目に「バットマンとは」を考えても仕方ないかもしれません。

サムネイル画像を見ていただけばわかる通り、キャラクターのベースは守りつつも、結構ド派手で奇抜なアレンジが加えられています。外連味あふれるガジェットや軽やかに舞う殺陣は非常に楽しいです。特にアニメーションのヌルヌルカクカクとした動きが独特で、思っていたより「マンガが動いている」感がありました。構図も見開きページのイラストのようです。特にキャットウーマンとハーレークインの肉弾戦は見応えがありました。二人とも可愛らしいデザインだし、アクションもキャラクターの特性に合わせた振り付けと組み合わせになっていて、さすがのクオリティの高さだと思いました。

けど、とりあえず面白いアイデアやデザインを繋げて一本の映画に仕上げた感じです。お話がチグハグで、これが見たいバットマンなのかというと微妙。「じつは裏切りでした」のパターンを特に伏線もなく何度もやられると盛り上がりませんし、なにより飽きますね。あまりストーリーでは楽しめませんでした。巨大ロボットの対決は想像を上回る荒唐無稽さで、なかなか面白いことをやるなあとは思いましたが。ゴッサムシティではなく平屋だらけの街並みなので仕方ないかもしれませんが、すこしでもここにバットマンらしさを感じさせるアレンジがあれば、もっと燃えたかもしれませんね。

最初にこの映画はあまり真面目に考えても意味がないと言いましたが、それでも気になる点が一つあります。それは、バットマンは「ヒーロー」じゃなくて「ヴィジランテ」だと思う!ということです。

今回もヴィランたちの頂点に君臨するジョーカーは、バットマンのカウンターとして登場します。しかし、彼がバットマンに対して連呼する「お前はヒーローだからな!」の言葉に違和感があるのです。だってバットマンは、過去のトラウマから犯罪を憎み、ゴッサムを夜な夜な徘徊する「ヴィジランテ」だと思うから。「ヒーロー」というと陽性で無私の人という印象を受けます。それこそ「マン・オブ・スティール」ことスーパーマンは「ヒーロー」ですよね。たとえ自分が犠牲になってでも善良な市民を救いたいと願う人間の鑑のような人です。でも、ブルースがバットマンを始めたのは極めて個人的な理由からだし、それは彼の活動と切っても切り離せないものです。戦いの動機が「憎しみ」なんですよね。当然、その鏡像として存在するジョーカーの意義も、バットマンを「ヒーロー」としてしまうと変わってきます。ジョーカーは、犯罪の撲滅を誓い「ヴィジランテ」たらんとするブルースを妨害し、ゴッサムを混乱に陥れることに快感と楽しみを見出しています。おそらく彼はバットマンが「ヒーロー」で自分が「ヴィラン」だとは考えていないと思うんですよね。これは両者が自覚的なのですが、バットマンとジョーカーは似た者同士で、コインの裏表なのです。ジョーカーはバットマンが活動している限り、存在し続けることでしょう。そういう部分のニュアンスが、ジョーカーの「ヒーロー」発言で薄れてしまうと思うのです。

これもまた僕自身の解釈でしかないわけですが、少なくとも「ニンジャバットマン」のバットマンとジョーカーの描き方には違和感を覚えました。完全に解釈ちがいですね。気に入りませんが、この映画の楽しみ方とはちがう気がするので、ここらへんでやめにします笑