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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「男はつらいよ 私の寅さん」感想:寅さんのお留守番の巻

こんにちは。じゅぺです。

今回は「男はつらいよ 私の寅さん」について。

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男はつらいよ 私の寅さん」は「男はつらいよ」シリーズ第12作目の作品です。

今回は寅さんがお留守番してさくらたちが旅行する新パターンです。冒頭、さくらはおじさんとおばさんに日頃の感謝を込めて九州旅行をプレゼントするのですが、そろそろ肝心の二人は寅さんが帰ってくる頃じゃないかと不安な気持ちを抱えています。毎度のこと余計なタイミングでやってくるのが寅さん。今回はいつも以上に「来るか/来ないか」がスリリングです。

これは完全に前振りなので、やっぱり一番来てほしくない時にやってきてきます笑 そして、みんなが気を使って遠回しにお留守番になることを伝えようとすると、寅さんはコソコソ隠し事しやがってとブチ切れるのです。本当に厄介ですね。シリーズ最高にムカつきます笑 おそらく彼ならストレートに事実を伝えてもキレるでしょう。基本的相手して欲しいだけなので、構ってスイッチが入るとケンカ別れするまだ収まりがつきません。相変わらず気分屋で自分勝手な寅さんに呆れてしまいますが、さくらたちが泊まる旅館に鬼電しまくるシーンでは爆笑しました。僕が寅さんの親戚だったらノイローゼになってます。でも、そうはならないところがさくらたちの優しさであり、愛の深さです。そして、おそらく寅さんを受け入れられるのは彼女たちしかいないであろうと思ってしまうのが、切ないところです。

今回のマドンナは岸恵子です。画家というよりは美術の先生みたいなオーラでした。「ここに泉あり」でも前橋フィルハーモニーのメンバーの役で出ていましたね。びっくりするぐらい綺麗でした。

ところで、本作はアートに絡めて「生きる歓び」を語る食卓の場面が印象的でした。人によってなにに喜びを感じ、人生の幸せを見出すのかは異なります。タコだったらご飯、寅さんだったら旅行。みんなが口々に自分の楽しみを語るこの場面はある意味「男はつらいよ」の核心を突いているのかもしれません。だって、寅さんと寅さんの惚れた女性は、結局求めているものが違うから、離れ離れになってしまうんですから。でも、みんな少なからず寅さんと同じところがあると思います。どんなお金持ちにだって望んでも手に入らないものはあるのです。「男はつらいよ」を見るたび、僕には寅さんの抱える足りないものへの渇望感が切実に感じられるんですよね。そして見るタイミングやその時の心のコンディションによって響いてくるツボが違うのです。だから何作見ても飽きないのかもしれません。