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「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」感想:最大のライバルにして唯一の理解者

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」の感想です。

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ふたりの女王 メアリーとエリザベス」は、陰謀に翻弄されたふたりの女王、メアリーとエリザベスの権力闘争を描く歴史映画です。

 

歴史を知らないなりの楽しみ方

僕は日本史は好きなのですが、世界史はあまり詳しくなくて、この頃のイングランドスコットランドの関係もよくわかっていません。でも、この映画はとても親切で、本編が始まる前に背景となる歴史について軽い解説が挿入されるんですよね。海外の歴史モノって、本国では常識扱いの知識をなんの説明もなく出してきたりして話についていけなくなったりするものなので、この事前解説は配給のナイス判断だったと思います。

ただ、知識がないことが時にプラスに働くこともあるんですよね。歴史を知らないので、たとえば戦争映画を見た時に登場人物がどんな結末を迎えるのか、ワクワクしながら話を追いかけることができるわけです。ホントは遠い昔にすでに起こった出来事なので、オチはわかりきっているはずなのですが。本作「ふたりの女王」もよくわからないなりの楽しみ方ができました笑

 

最大のライバルにして唯一の理解者

本作の原題は「Mary Queen of Scots」、日本語に訳せば「メアリー スコットランドの女王」という意味なのですが、日本の配給がつけた「ふたりの女王 メアリーとエリザベス」の方がわかりやすいし、内容を的確に捉えていたと思います。この映画は、最大のライバルにして唯一の理解者どうしであった、ふたりの女王の対立と決別を描いているからです。寛容と慈悲の心をもち、大胆な政略で王座を守る美しき女王メアリーと、女としての劣等感から心を塞ぎ、冷徹さと理性で統治するエリザベス。ふたりの生き様は対照的ですが、争いを好まず、平和的な解決によって国家と王家に安泰をもたらそうとしていました。しかし、彼女たちは宮中を牛耳ろうとする男たちの陰謀に翻弄されていくのです。メアリーとエリザベス以上に、女王の権力を狙う政治家たちの方がよっぽど欲深く、陰湿で、恐ろしかったです。期せずして同時期の公開になった「女王陛下のお気に入り」も、ひたすら男たちの愚かさ、情けなさを描いていましたが、これもまた男の目線でしか切り取られてこなかった歴史を語り直す試みの一つなのかもしれません。

 

ふたりの「女王」の熱演

シアーシャ・ローナンマーゴット・ロビーといえば、いまの映画界でもっともオスカーに近い若手女優二大巨頭と言えるのではないでしょうか。そんなふたりの「女王」の佇まいは、本当にこんな感じだったんじゃないかと思わせる上品さと迫力にあふれていました。メアリーの朗らかさと芯の強さ、透き通った蒼い目に宿る壮絶な闘志!侮辱されたときの悔しさと怒りに揺れる涙目の力強さには思わず震えました。シアーシャ・ローナンって優しそうな顔をしてるけど、ダメなものはダメって言い返せる強さみたいなものを持っている気がします、というか、そういう役がハマると思うのです。馬に乗って軍隊を率いる姿もカッコよかったし、スコットランドなまりはキュートでした。グッとくる女王です。

一方、エリザベスは傷だらけで弱々しさが目立ちます。天然痘によるあばたで醜い顔になった彼女の悲壮さたるや…。影で妊婦のお腹を作る姿は痛々しく、胸が締め付けられました。こちらもマーゴット・ロビーがその美貌を封印して、「女王」としてのあり方に悩み苦しみ続けるさまを、抑制の効いた演技で表現していました。この人も結構なカメレオン女優だと思います。役によって全然印象ちがいますね。「スーサイド・スクワッド」のハーレー・クインと同じ人なんて信じられませんよ。

 

ふたりの望んだ平和

血なまぐさい中世イギリスの生々しい姿が描かれている本作ですが、クライマックに夢のように幻想的な(おそらく史実には存在しないであろう)対峙シーンが登場します。女王としての孤独に押し潰されそうになり、平和への願いも先代からの因縁の解決も果たせなかった二人。彼女らの苦しみと「女」であることは切っても切り離せません。そんな陰惨な現実の中で、ほんの一瞬だけ交わる「孤独」の共感が切なく、そして重かったです。もし違う出会い方をしていたら、違う時代に生まれていたら、きっとふたりは素晴らしい友情を結ぶことができたもしれません。しかし、権力を望む者たちによって国家は分断され、流血の事態にまで発展してしまいました。

ブレグジットに揺れるイギリスは、いまも先の見えない暗闇の中で右往左往しています。メアリーの望んだ「平和」はいまも訪れていないどころか、また新たに分断の歴史に突き進もうとしています。女性リーダーのメイ首相は、この国を明るい未来へ導けるのでしょうか。