映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「バンブルビー」感想:スピルバーグ正統進化系

こんにちは。じゅぺです。

今回は「トランス・フォーマー」シリーズ最新作「バンブルビー」の感想です!

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バンブルビー」は父の死を受け止めきれない少女チャーリーと記憶を失ったバンブルビーが寂しさを埋め合う中で「本当の自分」と出会うまでを描きます。「トランス・フォーマー」シリーズだと1作目に近いテイストで、原点回帰と言える内容になっています。2作目以降はマイケル・ベイらしい豪快な爆破の楽しめるアクション大作って感じですけど、「バンブルビー」は監督が交代し、青春の甘酸っぱさとか挫折感をストーリーの中に織り交ぜた、より人間ドラマにフォーカスした異色な作品になっています。

 

マジメな「トランス・フォーマー」

別にこれまでが不真面目だったとは言いませんけど、「トランス・フォーマー」って途中から開き直って、はっきりと中国市場を意識した「景気の良さ」で勝負していたところがあると思います。たくさんロボットを出して、破壊して、ストーリーのいたるところに爆破シーンを散りばめ、それを一本の映画にまとめて世に送り出す。一般的な観客の情報処理能力などおよそ無視した過密な画面設計と緩急のないアクションの連続は、やがて飽きられ、「トランス・フォーマー」はただ冗長でメリハリのないアクションの代名詞として認識されるようにすらなりました。そして「最後の騎士王」の大失敗を受け、メインのシリーズは実質的な終わりを迎えました。しかし、前から開発が進んでいた「バンブルビー」の企画は生き残り、このたび公開に至ったわけです。

そんな「バンブルビー」は、これまでとはひと味違った作風になっています。より少女とバンブルビーの心の交流に焦点を絞り、ふたりの成長をじっくり描くジュブナイルの香りが強いのです。宇宙からやってきた戦闘ロボットの設定は、この物語を彩るフレーバーです。あくまで青春映画としての土台をしっかり固めた上で、アクションを描いているわけです。僕はこのアプローチ、とてもいいと思いました。ぜひとも他のスピンオフ作品でも「トランス・フォーマー」を材料に自由に料理してほしいところです。

 

スピルバーグ正統進化系

この映画をひと言でまとめると「見やすい」です。1から10まで素直に使っていて、ひねくれたところがあまりない。たとえば、アクションシーン。武術ののように投げ技を繰り出し、ゴリゴリと体を絡ませて戦う殺陣は新鮮です。登場するロボットも少ないので、情報量の多さに窒息してしまうこともありません。一方で走り回る人間のうしろでロボットたちが肉弾戦を展開するシリーズおなじみの長回しも登場し、ならではの巨大感などオタク的なツボも押してくれます。また、父の愛車やガラクタのラジオ、チャーリーのVHSなど、アイテムも(ちょっと滑らかすぎるぐらいに)鮮やかに伏線として回収されており、脚本の完成度もわりと高いと思います。

なにより、全体的な雰囲気が「スピルバーグ」っぽいんですよね。チャーリーとバンブルビーが喪失を乗り越えて成長していく姿はなんとも頼もしく、「E.T.」を連想させます。また、最近よく引用される「ブレックファスト・クラブ」など80年代カルチャーを露骨なまでに散りばめ、とても爽やかで明るい空気感を演出しています。チャーリーが父を失い、家族とも上手くいってないという設定はなかなか重たいのですが、あんまり湿っぽくなりすぎないのは、このスピルバーグイズムがポジティブに働いてるからではないかと思います。

あとこの映画、「意地悪な人」が出てこないんですよね。はっきりと悪役として出てくるのはロボット二人だけで、チャーリーたちに立ちはだかる軍人や博士、両親などの大人たちにもはっきりと目的や考えがあるし、根っこから悪い人間ではないので、嫌いにはなれませんでした。ここらへんも昔の、特に80年代〜90年代ぐらいの明るく楽しいハリウッド映画の残り香を感じます。

 

全体的に、あまりスケールも膨らみすぎず、ちょうどいい箱庭感でお話が展開するので気張らず楽しめました。女優ヘイリー・スタインフェルドの可能性も感じましたし、期待以上に面白かったです。次のスピンオフにも希望が持てますね。