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「ブロードウェイ・メロディー」感想:MGMミュージカル草創期の作品

こんにちは。じゅぺです。

今回は第2回アカデミー作品賞受賞作品「ブロードウェイ・メロディー」のレビューです。

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「ブロードウェイ・メロディー」は、レビューのスターを目指すマホーニー姉妹の物語です。

正直、この作品の価値は歴史的な意義が大きいと思います。MGMが全編トーキーの本格ミュージカル映画に挑んだ記念碑的な作品であり、その後のミュージカル映画の土台になっています。この頃はまだブロードウェイのスターたちも映画界には進出しておらず、ダンスのクオリティもショーの見せ方も平凡です。お世辞にも技術が高いとは言えません。第二回アカデミー賞作品賞受賞というとすごい映画のように聞こえますが、正直、ガッカリな出来ではあります。

しかし、そうであるがゆえに、その後のハイクオリティなMGMミュージカルと比較すると、興味深い部分もあります。たとえば、場面の切り替えごとに黒い背景に白字の字幕が入る編集にはサイレント映画の面影を感じます。まだ字幕を使わずにシチュエーションが変化していることを表現する技術が確立していなかったんですね。また、定点的なカメラワークも8年後の「踊らん哉」の機関室のシーンのような軽やかなカメラの動きと比べるとモッサリしていますが、このあいだのテクニックの発展を考えると面白いですよね。

ガッカリな出来とはいいましたが、ひとつとても好きなシーンがありました。上手くいかない人生に悲観し泣きながら化粧を直す姉の場面です。鏡台の前の女性って色っぽいと思います。「夏の遊び」を想起しました。夢を追いかける踊り子たちの、一つひとつのステージにかける想いの強さやプレッシャーが伝わってきて、とてもいいシーンです。一つでもこうやって好きなシーンに出会えたのであれば、その映画を見る価値はあったのかなって、思いますね。