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さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ゾディアック」感想:凶悪事件に対する一途な片思い

こんにちは。じゅぺです。

今回は「ゾディアック」について。

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「ゾディアック」は実際の未解決事件を題材にしたサスペンスです。監督はデヴィッド・フィンチャー。「ソーシャル・ネットワーク」は僕のオールタイムベストの一本です。独特の青く冷たい映像の質感と、ヒリヒリと肌に染みるような緊張感をつくるのが大変上手い監督です。「セブン」や「ゴーン・ガール」などグロテスクな人間の本性を暴くスリラーももちろんですし、「ハウス・オブ・カード」のような政治劇でもその手腕は存分に発揮されていました。

「ゾディアック」では、猟奇的な犯行を繰り返す連続殺人犯を追う3人の男の人間模様が描かれます。ひょんなことから事件の調査にのめり込むことになる挿絵作家のグレイスミス、ひとりで真相の間近にまで迫った刑事のデイヴィッド、そして貪欲にスクープを追い求める敏腕記者のエイヴリー。それぞれが事件に対する想いを抱えながら、犯人逮捕に向けて執着していく姿に、僕は少し恐ろしさを覚えました。特に家族も顧みず真相解明に燃え、やがては仕事すら辞めてしまったグレイスミスの情熱はどこかアンバランスで狂気すら感じます。どんどん深みにハマっていき、やがて抜け出せなくなっていく。自分の人生を全うに過ごそうとする意思すら捨ててしまう。真犯人を探すことが生活の中心になり、一つひとつ証拠を積み重ねて仮説を立てる刺激に感覚が麻痺しているのです。そこにはもはや事件に対する「愛」すら感じます。偏愛であり、一途な片思いです。中毒といってもいいかもしれません。ゾディアックを追いかけることが、ある種彼の存在証明にすらなっているように感じました。

このお話の主題は犯人探しではなく、あくまで人間ドラマなのですが、パズルのピースを組み合わせるように進んでいく推理パートも面白かったです。時間の長さも感じさせないテンポ感とスリルで楽しい内容になっています。主演の3人もアイアンマンにハルク、そしてスパイダーマン最新作のヴィラン・ミステリオとMCU俳優陣がそろっています。2時間30分以上あり、なかなかの長丁場なのですが、見る価値はありました。おすすめです。