映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「サイコ」感想:シンプルで複雑、オリジナルの輝き

こんにちは。じゅぺです。

今回は「サイコ」について。

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「サイコ」は、ヒッチコックの傑作サイコスリラーです。会社の金を持ち逃げした女が転がり込んだモーテルに、鳥の剥製を愛する謎めいた管理人の男がいて…というお話。次から次へとひっくり返る展開と、ショッキングな映像の数々に度肝を抜かれました。

いきなりのネタバレになりますが、中盤で主人公だと思っていた女性が殺されてしまうのは、かなり衝撃的でした。途中から「なぜ彼女は失踪したのか?」がテーマになり、彼女と管理人の謎をめぐる群像劇の様相を呈します。この大胆な構成はいま見ても新しいですよね。最後は管理人の男の狂気が暴かれ、観客に置いてけぼりを食らわせたまま、物語は幕を閉じます。泥から抜き上げられる女の車と、男の狂った笑顔が重なるラストカットの気味の悪さったら、思い返すだけで鳥肌が立ちますね。

ラストカットに限らず、それぞれのショットに力があります。そして、ただインパクトがあるだけではなく、一つひとつのアイテムやシチュエーションに意味が込められていて、綿密な計算の上に積み上げられた映像になっています。読み込めば読み込むほどその複雑さに感心してしまいます。たとえば、シャワーのカーテン越しに殺人鬼が透けて見えるシークエンスは有名ですが、それまでに母親の影の映る窓(=殺人鬼の影)や、突然の雨(=シャワーの時に起こる事件の予兆)、鳥の剥製(=管理人の正体)など、衝撃の殺害シーンに向けて細かい伏線が張り巡らされているのです。さらに、窓に映る母親の影と、管理人の男の愛する鳥の剥製は、じつは男がミイラ化した母親を所有し続けていたという、さらなる衝撃の伏線にもなっているのです。これに気づいたときは、思わず唸ってしまいました。ざっくりとしか見ていないので、繰り返し見てみれば、もっとたくさんの発見があるかもしれません。そうは言っても「サイコ」に関してはすでに先行研究がたくさんありそうなので、細かい分析はそちらに任せます笑

去年映画館でやっていた某映画も全編に「サイコ」の影響を受けていましたね。「サイコ」はとにかくみんなが真似しすぎて逆に新鮮ではなくなっているパターンかもしれません。「市民ケーン」と同じです。しかし、それでも原型としての輝きは他を圧倒していると思います。ムダがなくシンプル。類似の傑作もたくさんありますが、やはりオリジナルの放つオーラには敵わないと思いました。傑作です。