映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「友だちのパパが好き」感想:近親相姦への嫌悪

こんにちは。じゅぺです。

今回は「友だちのパパが好き」について。

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「友だちのパパが好き」父が娘の親友と"純愛"で結ばれてしまってことで崩壊していく家族を描く作品です。だいぶ気持ち悪い映画なので、よっぽど元気のある時じゃないとオススメできない代物です。

というのも、この映画で扱っているテーマが「インセスト・タブー」なんですよね。近親相姦です。正確にいうと別に親子が交わるわけでもないのですが、それに近い感覚の気持ち悪さが描かれています。

ストーリーは「友だちのパパが好き」というタイトルにある通り、主人公・妙子の親友であるマヤが、妙子の父に求愛し始め、父の方もそれに応えてしまう…という内容です。家族や身近な人間のオス/メスとしての欲望が暴かれていく様は、見るに耐えない生理的嫌悪感を誘います。いくら本人たちが"純愛"を強調し、自身ではそれを固く信じていようとも、まわりの人間はそこに性欲の影を感じてしまう。この異物感の正体がやはり「インセスト・タブー」にあると思うのです。父が「男」であり、自分と同じ歳の女に欲情していると気づいた途端、とてつもなく汚らわしい人間に見えてきます。たとえ自分が性欲の対象になることはないとわかっていても、この感情は簡単には否定できないでしょう。

また、この映画は他者という存在の気味の悪さを描いている作品でもあります。たとえば、親友のマヤ。犯されたくない家庭の領域にずかずかと土足で乗り込んでくる彼女の姿に恐怖を覚えます。妙子とマヤは最初から最後まですれ違い続け、絶対に交わりません。父との"純愛"を通して、決定的な溝が二人の間に生まれてしまうんですね。離婚を知らせてくれなかった両親、父の子を妊娠したハヅキの存在も、見ていてフラストレーションが溜まります。誰も妙子の気持ちを理解せず、目も合わせません。

結局のところ、誰も自分のことなんてわかってくれない、そして、他人の頭の中を覗くこともできないのです。生き物として思考の仕組みすら違う気すらしてきます。そう思うとかなり不安になるし、自分が前提として信じてきたものを揺さぶられる映画であると思います。

しかし、恭介とマヤだけは愛し合い、通じ合っているのです。明らかにおかしい人たちが、なぜか互いに理解しあっているのですから。これ以上気味の悪いことはありませんよ。どうして無条件で人を信じられるのか、もしかしたらそれが"純愛"なのかと考えてしまいます。しかし、最後までそこに希望は感じられません。お互いを求め合う恭介とマヤの姿は、まるで昆虫同士の交尾や産卵を見ているかのような気分にさせられます。心なんてなくて、ただ本能のままに動く肉体だけがそこにあるのです。

面白かったけど、下手なホラーよりトラウマを負う映画でした。そして近親相姦に対するこの忌避感はなんなのだろう。いつまでもモヤモヤが残る作品です。