映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「居眠り磐音」感想(ツイッターより再掲)

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居眠り磐音、みた。超絶大傑作。竹馬の友を斬らざるを得なかった侍・磐音は許嫁を残して江戸で浪人となり…。柔和な笑顔の裏に隠された深い悲しみ。軽快なテンポで繰り広げられる殺陣も、その一振りに失った未来の重みがのしかかる。その先が地獄だとわかっていても進み続ける、磐音の生き様に震える。

おっとりと紳士的な磐音=松坂桃李には実は悲惨な過去があり…というギャップと、そんな彼がいつその事実と真正面から対峙するのかというドラマ、そのあいだに挟まる町人たちのいざこざといった構成のおかげで、テンポがいい分、立ち止まってじっくり噛みしめるような重さはないのだけれど

つまり、なかなか点と点が結ばれず、線になりきれないところがある。しかしそれはクライマックスのとある幻想的かつ残酷な場面で一気に集結していくことになる。ここはとても素晴らしかった、というか、この着地点が見えて初めてこれまで描かれてきた磐音のドラマにどしっと厚みが生まれる。

ある種の諦めを帯びた笑顔が切ない。柄本佑杉野遥亮は出番少ないわりに存在感あった。ピエール瀧の代役・奥田瑛二も安定感。松坂桃李の陰のある佇まい、そして朗らかな少女から悲惨な運命をたどる許嫁を演じた芳根京子の死の匂いを感じさせる美しさ!一方、柄本明木村文乃など町人はコテコテ芝居。

波岡一喜みたいな悪役を出すあたり、まじめ一辺倒にするわけではなく、「人を斬る」という深刻なテーマ(これは当然なんども親友を斬ったトラウマに繋がっている)の中にも、チャンバラ劇の軽さとエンタメ性がしっかりある。磐音が浪人となって初めて腕前を見せる場面は、やはり「ヒーロー」だった。

「悲しい運命を背負っているヒーロー」というのがやはり燃えるわけですね。愛する奈緒に向ける顔がないと、豊後を後にした磐音。ふたりの間を永遠に隔てる心の距離がなんとも切ない。この辛さや苦しみは俺の大好きなキャプテン・アメリカとペギー・カーターの関係に似ている(と勝手に重ねてしまう)。