「スイス・アーミー・マン」感想(ツイッターより再掲)
スイス・アーミー・マン、みた。無人島で孤独に暮らすハンクのもとに流れ着いた不思議な死体。おならで海を進んだり、口から飲み水を出したり、謎の多機能っぷりに笑う。寂しさや傷ついた自尊心を癒してくれるメニーとの交流。こじらせにこじらせたハンクの解放に、甘酸っぱく複雑な爽やかさを覚える。
中盤のバスのくだり、無表情のメニーとカラフルな装飾のコントラストがシュール。二人だけの自由な世界。醜い自分と向き合わなくていい、ただひたすらにあの子に想いを馳せる。恋に胸焦がす高揚感。不思議な多幸感があった。おどけた感じの音楽とテンポのいい編集が光っている。
ここの居心地の良さからの終盤の落差。突然人前に全裸で放り込まれたような恥ずかしさ。いや、これには事情があってね、ああでこうで…って説明したいところだけど、怪訝な目つきがチクチク刺さる。そういう感覚。でも、もうハンクは自由の味を知っている。隠れておならをする必要はないとわかってる。
この映画はかならずしもハンクにとってはハッピーエンドではないかもしれない。でも、観客の心にはなにかが残る。さすがに人前でおならはできないかもしれないけど。あの笑顔に救われる人はきっといる。ほら、僕がみていた世界は間違いじゃなかったと。逆にそう思えないと生きていけないかもしれない。