映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「風立ちぬ」感想(ツイッターより再掲)

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風立ちぬ、みた。傑作。大正から昭和、大震災と太平洋戦争。生きているってすばらしいと心から思える瞬間と、愛する者が空の彼方へと消えていく残酷な現実。菜穂子と手をつなぐ喜びも、ゼロ戦が大空をのびのびと飛ぶ興奮も、すべて儚く消えていく。それでも人生は美しい。生きなくてはならないのです。

たとえ愛した妻がふらっと山の奥へ消えたとしても、心血と愛情を注いで設計したゼロ戦が人殺しの道具になり、ついには一機も帰ってこなかったとしても、二郎は生きなければならない。彼の人生にはたしかに美しい瞬間があった。菜穂子と出会った花咲く野原に吹く風、夢に見た飛行機が目の前で飛ぶ喜び。

この説得力はやはりアニメーションでしか生み出し得ない。画面中を埋め尽くす人の群れのダイナミズムや、汽車が草原を駆け抜ける爽快感、寝室で夫婦ふたり手を握る静かな幸せ。一つひとつの場面で感じた喜びがずーっと心に残る。だから残酷な終わり方でも、美しいものに触れた感覚が心に留まり続ける。