映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「きみと、波にのれたら」感想(ツイッターより再掲)

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きみと、波にのれたら、みた。海で亡くした恋人が、水の中に現れた…。みんな誰かの分身であり、救いあいながら生きている。いまは乗れなくても、次また大きな波がくるのを待てばいい。「夜は短し」や「ルーのうた」に比べ、うねるようなアニメーションも、破天荒なストーリーも控えめ。不完全燃焼…。

前半、ひな子と港のしあわせな時間の描写がいい。たまごサンド、コーヒー、サーフボード…目につくすべてのモノや景色が美しく見える。ふたりでいる時間が輝き、大切な思い出になればなるほど、喪失の痛みは大きい。Brand New Storyをキャッキャしながら歌うところの多幸感!川栄李奈うますぎ。

一方、中盤の転調以降はしっくりこない。というか、歌がしつこくて乗れなかった。残された3人の再生の物語が展開されていくが、山葵の成長やクライマックスのイベント、スナメリにウミガメなど、エピソードやモチーフの選択が軽いというか表層的に感じる。つまり、わざとらしい。

正直、この手の話で主人公が立ち直るのはわかりきってるので、たとえばもう一段階試練があったり、乗り越える上での波乱があったり、というものを期待してしまう。そこらへんがぬるっとしてる。港と、彼との出会いが理想化され過ぎて、ひな子がじぶんで選択して成長したように見えない。

アニメーションはとてもよかった。冒頭、送電線を追いながら海に向かうひな子を下から煽って撮る演出や、美しい花火と禍々しい炎、数々の波乗りシーン、そしてクライマックスの幻想的なシチュエーション。地味に音響にもこだわっていて、やはり映画館の環境でこその見応えだったと思う。