「火口のふたり」感想(ツイッターより再掲)
火口のふたり、大傑作。久々に再会した賢治と直子。身体に刻まれたあの頃の記憶が、ふたりを刹那の欲動に誘う。震災後の生と性。負い目に負い目を塗り重ね、あした急に終わらないとは言いきれない世界を生きる。腹が減ったら飯を食い、疼けばその場で交じり合う。「世界の終末」の日に人は何を選ぶか。
柄本佑と瀧内公美。ふたりが交わる様は生々しく、滑稽ですらある。スイッチが入ると気持ちが先に先に行っちゃって。直子の夫が帰ってくるまでの5日間。終わりは決まってる。身体を重ねる中で喚起される過去。そういう苦さを、「いま」で厚く塗りたくって、消していく。これでいいのだという確認作業。
ゴツゴツした質感の言い回し、悪く言えば文語的で説明口調のセリフは最初違和感があったのだが、そもそもこの世界には賢治と直子しかいない。ただそこにはご飯を食べるリビングと、お風呂と、一緒に寝てセックスする寝室だけが用意されている。とっても狭い世界でふたりは解放され、自由に生きている。