映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「青空娘」感想(ツイッターより再掲)

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青空娘、みた。超絶大傑作!高校卒業を機に東京へ帰ってきた有子だったが、妾の娘としていじめられ…。若尾文子のキュートさとハリのある若さに彩られたみずみずしい作品。彼女の笑顔は青空のように爽やか。悲惨な境遇でも涙ひとつ流さず前向きに頑張る様がとても健気で癒される。ミヤコ蝶々がツボ。

一見豊かな家庭のコミュケーション不全。家族と向き合えない、気弱で責任を負う勇気のない男と、愛されない苦しさから攻撃的になってしまう妻の対比は、きのう見た「最高殊勲夫人」とおなじ。結婚相手を探す男と、けっきょく若くて美しい女の子がすべての主導権を握る関係性も近いものを感じる。

有子はあきらかに理不尽で耐え難い不運になんども晒されるわけだが、それでも彼女は笑顔を絶やさない。ある意味、究極の鈍感とも言えるが、その前向きさと素直さでぐんぐん突き進み、周囲の悪意や意地悪を蹴散らしていく。そこに若尾文子の初々しさが加わり、有子は無敵のヒロインになる。

びっくりするぐらいテンポがいい。じめっとした感じになりそうな女中シゴキも、やたらと軽妙に進んでいくから、深く考える余地を与えない。それでいて、ウェットなところはウェットに。失恋した先生がカウンターで「青空娘に!」と酒を煽る場面がとても好き。彼だけ全然幸せになれてないところがいい。

あと、有子が「お父さん中途半端だから。本気で愛さないと幸せになれない」と諭したあと、家族4人がそのことばを噛みしめる場面。いちばん奥にお父さん、わきにお母さん、手前に長女と長男の並び。「してやられたな」とつぶやく。あのカットがとても気に入っている。切なくて暗いけど、希望も見える。