映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「五億円のじんせい」感想(ツイッターより再掲)

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五億円のじんせい、みた。募金によって救われた人生に重荷を感じた望来は「旅」にでる。感動の消費、善意は絶対という空気…現代社会に批判の目を向けつつ、それでも温かく、しあわせな気持ちになれるのは、この世界はまだやさしさにあふれていると思えるから。望月歩のピュアな輝きに支えられた作品。

とにかく「迷惑」をかけることを極端に嫌う日本人。優しくされると、その分だけ恩返しをしなくちゃいけない。地域の人々に支えられ、みんなの期待に応えるように生きてきた望来。そんな彼も思春期にさしかかり、自分の生きる意味を考える。この息苦しさは映画の中だけにあるものではない。

自分の命の値段は5億円なのか?それに見合うだけの価値を示せなければ、みんなが自分を生かそうとした努力は無駄なのか?生まれた時に借りた莫大な「借金」を返すのが自分の人生なのか?だからじぶんが「望来ちゃん」じゃない世界へ旅立つ。まっすぐに育った彼にとって社会はそれほど優しくなかった。

嘘つきに騙されることもある、犯罪に巻き込まれることも。けど、世の中に「善人」と「悪人」の2パターンの人間がいるわけでない。裏社会の人間が優しく手を差し伸べてくれる。ずっと嫌われていたのに、ふと心が通じ合う瞬間がある。世界は思ったより広くて、自分が生きる意味は、自分で見つけられる。

「死んだら美化される」かもしれない。けど、他人によく評価されることが、そして期待に応えて褒められることが、人生の目的なんだろうか。もっと自由に生きていいんじゃないか。自分は望来みたいな純粋さもまっすぐさもない。「優しくしてくれることで生き残れるタイプ」ではないけど、勇気がわく。