映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ダンスウィズミー」感想

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ダンスウィズミー、みた。超絶大傑作。音楽を聴くと踊らずにはいられない催眠にかかったOLの珍道中を描く。チャーミングで少々毒っ気のある矢口節はミュージカルを題材にしても健在。三吉彩花が最高にかっこいい。そして宝田明の色気!まわりの目なんて気にせず本当にたのしいときは「一緒に踊ろう」。

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前作「サバイバルファミリー」ほどの爆発力や意外性はなかったが、笑顔で劇場を出て、さっそく音楽をかけたくなるステキな作品でした。俺はオープニングから「この映画好きだな」って確信はあった。タイトルの出し方もいいし、宝田明のダンディで飄々とした佇まいがイカしてる。いい感じに「昭和」だ。

静香の幼少期にこの番組はさすがに古すぎるだろとは思ったが…。昭和の懐メロを中心にサウンドトラックを組む試みは「SUNNY 強い気持ち・強い愛」でも見られた。ちょっと選曲がジジイすぎるのと、主人公の世代とのズレは感じる。つまり、よくもわるくも宝田明に寄っているわけ。

オープニングのインチキ=催眠術がすべてなのだと思う。ブラウン管の向こう側で起こるファンタジーに観客は吸い寄せられていく。ウソをウソとわかって騙される大らかさ=ミュージカルとは何かがここで提示されているのではないか。酒でも入らないと踊らない日本人。でも、ホントは暴れたいんじゃない?

宝田明が「ジャージー・ボーイズ」で言うところのクリストファー・ウォーケンなのではないかという指摘。ミュージカルの大御所としてのふたりの経歴、そして映画における立ち位置も近似している。宝田明=マーチン上田は時空をまたぎ、静香と観客に歌って踊ることのエクスキューズを与える。

三吉彩花を見に行ったつもりだったのに、宝田明のことばかり語っている。それぐらいカッコよかったです。で、もちろん主演の彼女もすばらしかった。手足はすらりと長く、肩もすこしキュッとあがっている。華奢というより、骨格がしっかりしてる。どちらかというと中国や韓国の大陸系のスタイルの良さ。

前半は「このあとみんなから白い目で見られる」ことがわかっているから、華やかでありながら、ちょっぴり恥ずかしさが勝るミュージカルシーン。それが中盤のとある場面から徐々にポジティブかつ解放的な意味合いを持ち始める。そう、これはフィクションを通して分離した自己を取り戻す、覚醒の物語。

三吉彩花、正直あまり演技がうまいわけではない(コロコロ表情が変化するのは可愛い)のだが、彼女の身体性というか、スタイルの良さと上品な立ち居振る舞いですべて語れてしまっていると思う。やしろ優との相性も最高。予想外の出会い、妥協だらけの貧乏紀行。歌と踊りを通した絆。身体で語る映画だ。