映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「ディリリとパリの時間旅行」感想

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ディリリとパリの時間旅行、大傑作。南の島の少女が、キュリー夫人ロートレックら偉人との出会いを通じ、怪事件に挑む。ベル・エポックが舞台だが、現代社会への痛烈な眼差しも。少女には無限の可能性がある。彼女たちにはどこまでも遠くへ羽ばたいてほしい。そういう願いが込められていると思った。

パスツールピカソプルーストサラ・ベルナールドビュッシー…。ベル・エポックを彩る偉人たちとの交流。けっして明るいばかりではなかったこの時代に生きる人々の心の「豊かさ」と、彼らとふれあうディリリの輝く瞳に、無限の可能性を感じた。世界は思ったよりずっと広い。

実写とアニメーションの融合したパリの光景が幻想的でうっとりしてしまった。特にクライマックス。宝石を散りばめたような街の光。絶対に子どもたちに受け継いでいかなければならない「未来」がある。その裏にはたくさんの影があり、虐げられ苦しんでいるたちもいるのだという事実も。

絵画、歌、ダンス、小説、ファッション…ディリリが触れるアートは、文明そのものであり、人びとの心や生活を豊かにする。それは普遍であり、人間の根源だ。たとえ貧しかったとしても、オレルのようなちょっとの工夫で毎日が明るくなる。そして世界を少しずつ広げてくれる。若者に未来を与えてくれる。

ディリリの未来は定まっていない。何になりたいかも不安定だ。だが、それでいい。彼女には無数の選択肢があるのだし、どれか一つを選ぶ必要もない。そういう優しさ?がこの映画にはあると思う。物語の根底には女性への蔑視の歴史、居場所のないマイノリティの苦悩、貧富の差など現代に通ずるテーマも。