映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「無限ファンデーション」感想

f:id:StarSpangledMan:20190828001307j:image

無限ファンデーション、みた。大会に向けて準備を進める演劇部の姿を全編即興劇で切り取った青春グラフィティ。自由度が高いゆえの浮遊感、足場の落ち着かなさは拭えないが、それでも、計算の外へと飛び出す若さと無軌道なエネルギー、演技の拙さには不思議なパワーがある。西山小雨の楽曲が最高。

もちろん主演の南沙良(泣きの演技のバリエーションの豊かさだけで、ものすごいポテンシャルの女優だとわかる)は素晴らしいのだが、脇役だったはずの原菜乃華が、とある場面から突如として存在感を増す。こっち主人公の方が良かったのでは?と思うぐらいの引力。こっちに感情移入してしまった。

音楽室での堂々巡りのケンカ、ミライとナノカの会話(足立紳監督も言ってたけど、「才能」って言い過ぎ笑)は、ずっと同じこと言ってて、もはや演者の引き出しの問題なのだが、それゆえに高校生の稚拙さ、幼さが生々しく刻まれていたと思う。」

鈴木先生」で「ナマが好きなんだもん!」とか叫んでいた小野花梨が、これまた複雑な女の子を好演。ふてくされ顔が似合う。一方、大人パートは要らなかったかなと。「大人の視点」を入れたかったらしいが、かえって即興劇の良さを削いでた。片岡礼子の芝居はちょっと酷い。撮り直し効かなかったのか?

生っぽさの魅力はある一方で、散漫とした印象の作品に強度を与えるのは西山小雨の楽曲。ずば抜けてよかった。辺鄙な田舎の、住人以外にとっては何の意味も持たない光景を、味わい深くエモーショナルに色付けしている。これがなかったら映画成立してないだろうもはや。