「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」感想
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」をひさびさに。超絶大傑作。無邪気だったあの頃に帰りたいと願う大人と未来を取り戻そうとする子ども。かつて想い描いていた21世紀はやって来ない。大人は弱くて脆くてずるい。現実は腐ってる。それでもしんのすけ=僕たちは走るしかない。
ケンとチャコは「匂い」を拡散する前に、野原家を自宅に招く。ウルトラセブン「狙われた街」を彷彿とさせる場面。二人は作戦の前にすべてを話してしまう。「自分で未来を摑み取れ」とまで言う。彼らは単なる悪者ではない。みんなきっと付いてきてくれるはずだと信じてるけど、強制はしていない。
むしろケンとチャコは自分たちの作戦を止めてくれる人が現れてくれることを待っていたのではないかとすら思う。その煮え切らなさや透けて見える後ろめたさもまた、彼らの人間臭さであり、大人たちの弱さと迷いでもある。懐かしさに甘えたとして、何もかもうまくいくわけではないとみんな知っている。
風間くんは「懐かしいってそんなにいいのかなあ」と言う。そしてしんのすけは「オトナになりたいから」と叫ぶ。彼らには帰るべき過去がない。「懐かしくて死にそう」なんて感じることもない。空は東京タワーの先にどこまでも上へ上へと伸びている。この先もっと幸せになれるはずだと信じてる。