映画狂凡人(映画感想ツイート倉庫)

さいきん見た映画の感想を書いています。ネタバレありなので未見の方は注意してください。

「惡の華」感想

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惡の華、みた。女子のブルマを盗んだことから始まる春日と仲村のサディスティックな主従関係。特別な存在でありたい、あの山の向こうへ羽ばたきたいという思春期の激烈な情動と、暴力的なまでのイノセンス。そして性への執着と裏返しの、成長への困惑。どす黒いがもっとも「キラキラ」した青春映画だ。

「いなくなれ、群青」でハマった飯豊まりえ、今回もとてもいい役でした。彼女の絡むエピソードなどは、予告編から受ける印象を良い意味で裏切る内容。高橋和也鶴見辰吾など脇を固める俳優陣も安定して良い。伊藤健太郎はほぼ初見だが、根暗な目つきがうまかった。変態演技もイカしてる。

玉城ティナがやはり最高。あの線の細さ、不気味なまでに神々しい肌の白さよ!健気で儚いようにも、暴力的でおっかないようにも見えてくる。彼女の抱える孤独と虚無は普遍的だ。思春期の壁を突き抜け、幅広い世代の心に刺さるはずだ。抜け出したいけど抜け出せない、どこにゴールがあるかもわからない。

正直、初めはノリについていけない部分があったのだが、序盤のクライマックスとなる、雨中の場面で、これは「自分の話」でもあるのだと気づいた。そこから一気に自分と映画の距離が詰まった。なぜ仲村は春日に無理難題を押し付け、罵詈雑言をまき散らすのか、クソムシが!と叫ばなければならないのか。

仲村の暴言の意味や背景が明らかになったとき、彼女もまた「みんなと同じ」人間のだと気づくと同時に、単なる思春期の惡の華におさまらない、果てのない地獄が彼女の視界に広がっているのだと、はっきりわかるのである。またそこから話は予想もしなかった方向に転がっていく。ねじくれた青春映画。