「人間失格 太宰治と3人の女たち」感想
人間失格 太宰治と3人の女たち、みた。太宰が「人間失格」を書くに至るまでを描く伝記的映画。振り回され、傷つき、愛を求める妻と二人の愛人。太宰は彼女たちの魂を吸い取るように作品を書き、文壇のスターの階段を駆け上がっていくが、その実、獲物にされていたのは太宰の方なのかもしれない。
蜷川ワールド、一回で十分かもしれないと思ってしまった。このあいだ見た「ダイナー」とほぼ同じだからだ。万華鏡のように、妖しく輝く光も、死のイメージと直結する、舞う花びらも、前作と代わり映えしない。伝記映画の切り口としては面白いが、彼女の手法にすでに飽きているきらいがある。
なるほど今回はそうきたのね!って感じはない。はじめに蜷川ワールドがあって、その土台の上に作品を乗っけている。メニューが一つしかないこってりラーメン屋。せめてチャーシュー麺ぐらい置いてくれよと。その味が好きな人にはたまらないのだろうけど。そして相変わらず映画的ではない。
映画的って何?という話になってしまうけど、どちらかというと演劇的なのではないか、というのは多くの人が指摘していると思う。3人の女それぞれの居場所=家があり、太宰には書斎と酒場があり。酒場での取っ組み合いの場面が何度かあるが、カメラで切り取られたドラマというより舞台での演技だった。
わりかし文句多めになってしまったが、それぞれに葛藤を抱え、それでも太宰のほうを向かずにはいられない3人の女たち=宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみはよかった。そして何より小栗旬。見てくれこの美しい顔!感じてくれこの色気!という蜷川実花の叫び声、私にもしっかり届きました。